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2012年9月3日の月曜日を
お知らせします

1ヶ月のごぶさたでした。メキシコから無事、帰って参りました。

まず、今回のメキシコ旅行、目標達成率はまさかの「2割」。
ひとことで言うなら「とほほ」だ。

準備不足、語学力のなさ、自分の慎重さ…原因は山ほどある。
とほほ部分に関しては現在、私の中の超人ハルクがチカラワザで再構築中。
その際にはきっと面白いものができると思うので、これから海外旅行、とくにメキシコへの旅をお考えの皆様におかれましては、ぜひわたくしのシカバネをお越えになることを強くおすすめします。

それではまず「楽しかったメキシコ旅行」部分をご報告いたします☆

メキシコ旅行記
ゆきて還りし物語
第1回

 明日はついに旅立ちの日である。念願のメキシコ旅行だ。
 この旅が現実になるまで、実に3年のときが経過していた。近年の年間目標達成率は6割を越えている強打者の私だが、「メキシコに行く」という目標だけが、その打率を落としていたのだ。
 母親業を持つものにとって、長期休暇の取得は至難の業だ。
 スケジュールのジグソーパズルをあらゆる方向を吟味しながらはめ込み、あるものは無理な角度から、あるものは放置し、ついに実現することとなった2012年8月である。へっへっへ。

 電話口で旅行代理店の方は少しばかり年齢を重ねた女性のようで、押し付けがましいほど親切だ。きっと外出の際は、ポーチいっぱいのアメちゃんを携帯し、電車の座席では1.5人分の座席を必要とする体格ながら、お年寄りや子連れが乗車した際には光の速さで席を譲るだろう。マナーの悪い客には即効で説教だろう。イメージでは、関西弁の太った小宮悦子。
 そんなことはどうでもいい。彼女はパソコンを高速でパチパチやりながら言う。

「いちばん飛行機のチケットが高い時期ですからね〜」

 ハイシーズンというやつだ。予算より5万円高いが、ええい、金ならある!
 かくしてクレジットカードは限度額を超え、しばらくだいこんめしを食べる生活となった。

 さて、冒頭で「明日」と言ったが、暦の上ではもう今日だ。徹夜である。理由は「毎週月曜新聞」の更新だ。
 いや、正直に話そう。ブログの更新などで徹夜はしない。そんなイノチを削ってまで伝えたいことなど私にはひとつもない。
 荷物のパッケージもスペイン語の追い込みも完了していない中で、徹夜を強いられた痛い出来事については後日、超人ハルクの仕事を待つこととして。

 成田空港からユナイテッド航空の機体に乗り込み、まず第一の任務だ。それは…

「機内食のおかわりはできるのか」



徹夜がカオに出る37歳

 キックの師匠に聞くところによると、当然できるとのこと。
 1つで十分なのと恥ずかしいのとでやったことはないが、本当なのか確かめなくてはなりますまい。
 機内の皆様が食事を終えたタイミングで、大きな声で聞いてみた。

「おかわりありますか?」

 客室乗務員の女性(ルーシーリュー似)は一瞬「えっ!?」と戸惑うような表情を見せたものの、確認して参りますと外した後、両手にトレーを持って再登場。

「ビーフ、オア、チキン?」

 第1の任務は完了だ。
 機内食のおかわりは、できる。
 ただ、隣席の中年男性の視線が痛い。あと食べ過ぎて苦しい。

 しかし以降、このルーシーリューは親切かつ馴れ馴れしくなり、「寒くない?」「何か飲む?お水ね?」「おなかすいてない?」と、12時間の滞空のあいだずっと(タメ口で)世話を焼いてくれた。
 機内食のおかわりは、快適な旅への切符なのかもしれない。

 成田からメキシコシティのベニート・ファレス国際空港まで、サンフランシスコで乗り換えて計16時間。
 徹夜の疲れだろうか、私にできたのは、外国のお札を笑わせることぐらいであった。



 飛行機が遅れたためか、迎えに来るハズの人物(知人が紹介してくれたルチャドール。wikiによると175cm/84kg)が見当たらない。どどどどうしよう。
 しかしよく見ると「MARIKO」というプレートを持った見知らぬイケメンが。

 彼の佇まいに紹介文をつけるなら

「艶やかな堕天使が放つフェロモンの波動砲にガイアがひれ伏した」

 カンペに用意しておいたスペイン語は「私の名前」と「遅れてすみません」だ。
「シャツのボタンをもう少し上までとめてください」は何と言うのだろうか。

 お兄系な彼と、カニエ・ウエストを強く悪くした感じの友人が、宿まで送ってくれた。
 見た目によらずと言うと失礼だが、彼らは非常に優しく、私のたどたどしいスペイン語に辛抱強くつきあってくれた。
 初めてのメキシコシティ。美しい夜の街をホットロッド調のクルマで爆走しながら交わした会話は、ずっと忘れないだろうな。

 これを皮切りに滞在の間じゅう、様々な人からの親切を全身に浴びることになる。

 この旅の「目標達成率は20%」にも関わらず、楽しい旅だったと言えるのは、メキシコ人の優しさに心底感動したからだ。
 その優しさの理由として「他人の幸せを祈る文化」が根底にあるのではないか。そう感じた出来事については、後日改めてお伝えしたい。

 さて、問題は「標高差」だ。メキシコシティの標高は2000m超。ふだん暮らしている場所は50mなので、急に山頂に到着した状態だ。猛烈な頭痛に襲われた。くっ…不覚!
 宿に着いたら痩せ型のドクトル・ワグナーJrがいたのだが、満足なリアクションがとれたか自信ない。

 そして数日の間、人生初の「不眠」にも襲われ、前途多難感満載で始まった冒険。
 続きはまたらいシュー☆

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2012年9月10日の月曜日を
お知らせします

3年越しの夢だったメキシコ旅行。
膨れ上がった野望と煩悩により、目標達成率は2割にとどまったものの、メキシコの人々の優しさに触れ、実りの多い旅となりました。
メキシコ旅行記の第2回はまず、ルチャ部の部長らしからぬ「楽しい観光」部分をお楽しみください☆

メキシコ旅行記
ゆきて還りし物語
第2回

 数多くの歴史的文化財を有するメキシコ。世界遺産であるテオティワカン遺跡は、滞在したメキシコシティからは北へ50km。クルマで約1時間の距離だ。
 テオティワカンとは「神々の都市」という意味。
 アステカ神話によると、身を捧げて太陽と月となったふたりの神のために建てられたのが、この太陽のピラミッドと月のピラミッドだそうだ。

 ここまでクルマを出してくれたコードネーム「おっちゃん」は、退職後、メキシコで暮らし始めて3年になるという。スペイン語を流暢に操り、無知な我々を各地へ連れて行き、ゴハンをごちそうしてくれたホトケのようなオッサンだ。ただ、ことあるごとに30年来の恋人であるRさんへの愛を語り始めるので、スルー力も必要だ。

 まずは太陽のピラミッドへ。おっちゃんは断固として下で待つと言う。確かにこの傾斜は登る者を選ぶ威圧感。何度でもサスケに挑む山田さんを思い出し、自分を奮いたたせる。

 

 スペイン語を話すタケダくんは、異国の男性に話しかけられている。日本を好きだというその男性は、帽子とは断言できない形状の物体を被っている。雪のしんしんと降る大晦日の夜に、おじいさんがそっとお地蔵さんにかぶせたものはコレではないだろうか。

 タケダくんは置き去りにし、我々は頂上を散策。
 ピラミッドの過ごし方もいろいろだ。肌の白い太った家族連れは滝のような汗を流してぼんやりと立っている。子供は菓子をねだっている。最良の位置で記念撮影をしようと試行錯誤する中国人。灼熱の中、微動だにせず瞑想にふける痩せた白人。並んで座っている巻き毛のカップル。愛でも語らっているのだろうか。
 よく見ると急な斜面に何やら書き込んである。相合傘のようなものか。ピラミッドで愛を誓うとはなかなかロマンチックなマネを。しかし、どこにでもある「別れるジンクス」がないか心配だ。

 我々日本代表はと言うと、ピラミッドを手のひらに乗せようと必死である。あるいは飛び越えようと必死である。このエネルギーの3%でも、サッカー日本代表の応援に向けていれば…!




  戻るとタケダくんはまだ、かさじぞうと話し込んでいた。長い。
 ちなみに彼の優しさときたら、大仁田厚も泣きながら胸ぐらをつかむほどだ。というのも後日、見ず知らずの日本人女性の身代わりとなって、強盗にその身を差し出したという。人が良いにもほどがある。好きになってもいいですか。

 ちなみにこの日、ご一緒させていただいたのは、宿で知り合った面々。
 前述のおっちゃんとタケダくん、「振り向いたらいない」マサさん。撮影に夢中ではぐれるのが特技だ。疲れを知らない男でもあり、常人離れした距離を徒歩で踏破する。彼の「歩いて行けるよ」だけは信じてはいけない。
 そしてユイちゃんは、知的で素敵な19歳。ティーンネイジャーってだけでなにこの無敵感。脚の美しさはけしからん。遮光ガラスなしで見たら角膜を痛めてしまうまばゆさだ。まったくけしからん。

 

 遺跡の全体像は、月のピラミッドから見渡せる。

 2012年8月現在、登れるのは中腹あたりまでだが、風に吹かれながら「死者の道」を一望し、足をブラブラさせるのは格別だった。

 滞在中にビッグイベント「ルチャエキスポ」が開催された。
 文字通り、ルチャの博覧会である。Centro Banamexという大きな会場を3日間貸し切りで、企業やショップ、選手がブースを出し、物販やサンプリングを行なっている。リングは2箇所に設置してあり、インディからメジャー団体まで一日中、試合が行われている。

 もともと私はミーハーではない。ジャニーズに会い放題のテレビ局勤務時代にも、盛り上がったのは一度、ミュージックステーションにブランキージェットシティが出演したときだけだ。この時だけは、浅井健一に握手をしてもらうまで、楽屋の前やスタジオ周辺をうろついた。そのあとおろしたての靴でウで始まるアイツを踏んだのは良い思い出だ。

 そんなことはどうでもいい。
 とにかくそもそもミーハーではない私が生まれて初めて浮き足立ち、一生分のミーハー心を燃やして選手と写真を撮りまくったので御覧ください。

いちばん心が震えた出会いがコレだ。

ローリン親子!

神レベルのマスク職人だ。
まさか雑誌で見たホンモノに会えるとは…!しかも優しいし!辞書を引きながらのたどたどしいスペイン語を、にこやかに(ボーイのほうは覆面で表情は見えないけど)待っていてくれるの。もしかしたら…もしかしたら運命の人かもしれないわ!
す、す、す、好きで…おっとあぶねえ持病の告白症候群の発作が。

マスク職人 ローリン親子

このあと何度もお話しする機会をいただき、プロ魂を垣間見るできごともあった。
ああ、スペイン語がもっと話せたら…!

というわけで、お勉強に戻ります☆

らいシューは祝日だからお休み!

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2012年9月24日の月曜日を
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メキシコ旅行記
ゆきて還りし物語
第3回

3年越しの夢だったメキシコ旅行記第3回。
ルチャ部の部長としてやらねばならぬことがある。
ルチャリブレ観戦だ。

8/7 アレナメヒコにて観戦。

8/12 アレナコリセオにて観戦。

8/14 アレナメヒコにて観戦。

8/17 ルチャエキスポにて観戦。

8/17 アレナメヒコにて観戦。

8/18 ルチャエキスポにて観戦。

8/18 イスタパラパにて観戦。

8/19 ルチャエキスポにて観戦。

8/21 アレナメヒコにて観戦。

8/24 アレナメヒコにて観戦。

全部一緒じゃねえか



などというツッコミは無用だ。
違うの!ちょっとずつ違うの!

アレナメヒコ、アレナコリセオの対戦カードはコチラ。
この選手たち全員を会場で見ることができたのだ。どうだうらやましいだろう。
arena mexico martes 7 de agosto arena coliseo domingo 12 de agosto arena mexico martes 14 de agosto
arena mexico martes 17 de agosto arena mexico martes 21 de agosto arena mexico martes 24 de agosto

 会場内は飲食物とカメラは持ち込み禁止。売り子がひっきりなしに姿を見せ、サンドイッチやスープ、ピザ、スナックに加えてマスクや応援グッズを売り歩いている。ビールは2本分を紙コップにドボドボと注いでくれて50ペソ。応援ラッパが鳴り響き、声を張らねば会話できないほど賑やか。もちろん、気の利いたヤジで会場を温める職人たちもいる。
 会場の外にはマスクやTシャツ、グッズなどの露店が所狭しと並んでいる。マスクは50ペソ〜300ペソぐらい。仕上がりや状態はピンキリなのでチェックは必須。

 一緒に写真を撮ってくれと頼まれること数度。この私の立派な体格(特に"太もも"の名に恥じぬほど太い腿)は海外でも通用するようだ。女子プロの遠征と勘違いされたのかもしれんな。よしかかってこいや。

 いずれも女子プロが1試合ずつ入っている。マルセラ、レディ・アパッチェ、プリンセサ・ブランカなど、強く美しい女性たちの中で、いちばん心を奪われたのはダリスちゃん(のおシリ)です☆

 新日本プロレスの棚橋選手も出場した8/24は、さすがに大きい試合だけあってカードも豪華。カンペオン・ウニベルサル関連の試合ではコミカルあり、バチバチありでどんな観客も大熱狂。マキシモちゃんのしたたかな戦術が光った。ラ・マスカラをトップロープにドウゾと勧めておいて、後ろから突き落として勝利するなどし、ボラドールJrとの一騎打ちに持ち込む。しかし、ボラドールは自らリングアウト。マキシモちゃんの必殺ムーブ"ロープに振って投げてからのキス"に恐れをなしたかふふふ。
 この日のベストバウトはマスカラ・ドラダとメフィストの一騎打ち。意地の張り合い投げ合い飛び合いを繰り返し、勝利を収めたのはメフィスト。コーナーポストに登るその姿に、鼻がツーンとした。
 メフィストの背中はいつも、悪の悲哀を背負っているような悲しい決意を感じさせるのだよ…。そのため勝利の喜びはひとしお。

 レイ・コメタくんとプーマ・キングのマスクを破り合う激しいファイトに昏倒した女子は私だけではないはずだ。アベルノさんのソンブラいぢめが痛気持ちいい!ミステル・ニエブラの衰えを知らない体力と人気!悪くて面白いなんてまるでタイムボカン☆ 生ティタンの生逆立ちに興奮!来日決定選手だ予習を怠るな〜!アンヘル・デ・オロがキラキラしてるぅー! ディアマンテもディアマンテ・アスールも若さ炸裂!ルーシュもマルコ・コルレオーネもイケメンすぎてキモい!ストゥーカJrもデルタも見ちゃったよイイね!イホ・デ・ファンタズマすごいな!ポルキーかわいい〜!ニエブラ・ロハもおっきくてイイね!レイ・ブカネロ&テリブレあとアルカンヘルさんももうレジェンドでいいのでは!エル・サムライに佇まいが似ているので密かに恋焦がれていたエウフォリアにやっぱ胸キュン!ウルティモ・ゲレーロさんの安定した悪事ときたら! あ、あ、あ、アトランティスーーーー!!!

 すいませんちょっと興奮してニホンゴムズカシイネ〜

 ひとりで行って隣の席の小さな男の子&おじいちゃんと盛り上がったり、プロレス自体初めての人たちと観たり、マスクかぶって騒いだり、酔っ払ってほとんど寝てたり、素敵な男性と甘酸っぱい感じで観たり…。
 ただ漫然とルチャを観ていたようで、その実は並行して多様なコミュニケーションが持たれた。一緒に観てくれたみなさん、ずっと忘れないよ☆

ちなみにこないだの土曜も行ったからね。

ドラダーーー!

ライガー、ドラダと一緒に☆

いずれもご本人ではありません。ははは!

 と、マシーンのようにプロレスを観てしまう体質の私を救ってくれたのが、偶然にも宿を同じくしたかわいい女の子たち(まさかの世界旅行中)だった。
 あぶねえ、ルチャまみれで終わるところだったぜ・・・!
 次回は銀細工で有名な美しい街タスコのレポート☆おいしいものもたくさん食べたよ〜!

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2012年10月1日の月曜日を
お知らせします

 3年越しの夢だったメキシコ旅行記第4回。
 ルチャリブレ観戦のみで終了するところだった旅を、文化的なものにしてくれたのが、宿で出会った世界旅行中の方々。
 彼らに共通するのは柔軟な発想と落ち着き、そして寛容さと情熱が同居している点。ミラクルだよ。世界旅行すると立派な人になるようだ。やったほうがいい。
 ユイさん、アヤさん、平賀さん、誘ってくれてどうもありがとう。

メキシコ旅行記
ゆきて還りし物語 第4回
★タスコ Taxco

 銀細工で有名な街タスコは、メキシコシティから車で3時間程度。テオティワカンでもお世話になった「おっちゃん」に乗せてもらい、一泊二日の観光旅行だ。

 高速道路にはところどころ「AGUA(水)」という看板がある。たいていの車は発熱しがちな持病を抱えており、ときどき水を与える必要があるとのこと。
 ところでこの日もおっちゃんは、30年来の恋人の話だ。その話、前に聞いたなと助手席でウトウトし、高速の出口を見逃した。3時間のハズだったがちょっとしたドライブに予定変更。ドウモトゥイマテン。


 メキシコの一般道で出会うもの、それは「トペ」だ。道路の舗装に一定の間隔で棒状の突起を付けてある。スピードの向こう側を知りたがりがちなドライバー対策とのこと。
 何メートルかおきにスピードを落とし「ガッタン」とトペを越えてゆく。のんびり進むほかないようだ。

 都会を一歩離れるとコレだ。車ではなく、ゆうゆうと道を渡る牛や馬で渋滞。

 快適なドライブを邪魔するのは、トペ、オーバーヒート、牛だけではない。
 前方にただならぬ気配。見ると、銃を携えた警官たちが、検問を行なっている。免許証確認だけではなく、車から降りろとの指示。
 案ずるな。可愛ければ許されるハズだ。得意の特殊メイクで10歳ほど若返っている私に任せろ。

 結論から言うと、何事もなかった。後部座席にいた20代のかわいい女子たちを見てみたかっただけのようだ。
 チカラの限り色気を振りまいて助手席から降りた30代の女性は捨て置かれた。

バカモ〜ンそいつがルパンだ
ったらどうするの。

 ともかく無事、タスコに到着。
 白い壁の家々が立ち並び、それは美しい街である。
 赤みがかった屋根の上に広がる青空にココロが深呼吸する。

 徹底的に美しい景観の中を走るタクシーは白いフォルクスワーゲン、ビートル。「ボーチョ」と呼ばれていた。安価で、7万円ほどで買えるものもあるそうだ。持って帰るべきだったか。

 坂の多い街で、クルマのほかバイクも多く見かけたが、ナンバーの付いているものはひとつもなかった。


食べ続けるとこうなるょ☆というお姉さんが売っている超美味しいケーキ

 石造りの素朴なものから荘厳な彫刻を施したものまで、メキシコには本当に教会がたくさんある。中には聖人の彫像が数多く飾られている。



中には秘宝館ノリの地獄絵図も。







 広いベッドと清潔なバスルーム、窓からは美しい眺めの部屋は4人で550ペソ(4000円弱)。ピザとビールの夕食をとりながらおしゃべりをしていると、心の底からリラックスしていくのを感じた。
 眺めの良いレストランで伝統的なメキシコ料理をいただき、市場を散策し、教会を眺め…私一人だったらプロレス会場に行くだけで終わっていたこの旅行が、突然豊かなものになり、ココロで感謝のトルネードが吹き荒れた。
 それまで悩まされていた不眠がうそのように、ゆったりとした眠気がやってくる。
 メキシコについて7日目、ようやく熟睡することができた。

★ルイス・バラガン邸
Casa Luis Barragan

 世界遺産にも登録されているルイス・バラガン邸。ルイス・バラガン(1902-1988)は、明るい色彩の壁を使用することで有名なメキシコの建築家。 内部の撮影はできないが、『ルイス・バラガンの家』という本に写真と詳細な解説があるのでぜひどうぞ。
「壁を塗るのではなく、空間を塗る」というガイドの説明の通り、すべての壁を塗ってあるのではなく、場所によっては色ガラスを通した太陽光の色であったり、反射だったり、時間帯によって微妙に色合いを変えることがうかがえる。
 天井までの大きなガラス窓で開放的なリビングには、バーンスタインのレコード、ピカソやアンディ・ウォーホルのポートレイト。友人である画家チューチョ・レイエスの色鮮やかな絵画もたくさん飾ってある。書斎の背表紙を眺めていると『日本のかたち』という本もあった。 2階の窓からは、隣家の庭の眺めを拝借する「借景」もある。
 不思議なのは彼の人となり。家のあちこちに十字架のモチーフを使用している。また、家を訪れる複数の女性たちと過ごすロマンティックな秘密の空間もある。
 偉大な建築家は、敬虔なカトリックで、女好き。人間って、言葉にするとつじつまが合わない。

★ヒラルディ邸
Casa Gilardi

 バラガン邸から歩いていける距離に、彼が手がけた最も小さな家であり、最後の作品であるというヒラルディ邸がある。
 呼び鈴を押すと、普段着の上品なご婦人が現れた。ご主人がヒラルディ氏の友人で、ヒラルディ氏が亡くなる際にこの家を譲り受け、当時のまま、何も変えないように暮らしているそうだ。

 1階のエントランスを抜け、黄色い光であふれる廊下を抜けると、中庭に面して青く塗られた空間の中にプールが。水中に仕込まれた照明のほかは、昼は太陽の、夜は月の明かりだけ。

 バルコニー部分のみ、ご好意で写真を撮らせてくださった。

 美しい空間だ。静謐な空間ながら、バラガン邸と違い、ここには人の暮らす気配がある。食事の支度をするいい匂いが漂い、2階のバルコニーではシャツが風に揺れている。

 バラガン色の柔らかい空間に暮らすその人は、ご自身も柔らかい雰囲気をお持ちで、そこにいる間は私もその色に塗られているのかと思うと、静かな気持ちに。

 暮らす場所って大切ね。

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2012年10月15日の月曜日を
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今日は食べ物の話をします。
メキシコ料理まぢおいしい。
オナーカガスキマーシタ!

メキシコ旅行記
ゆきて還りし物語 第5回
★メキシコ料理特集★
comida mexicana


sopa de lentejas
屋台でレンズ豆のスープ


arroz a la mexicana
ピラフ★半熟の目玉焼きと一緒に


enchiladas(verde)
エンチラーダス。トルティーヤに具が包んであるものにグリーンソース(辛)がかけてある。トッピングのチーズがすっごくおいしい


enchiladas(mole)
同じくエンチラーダス。モーレソースで。モーレというのはカカオの風味がするスパイシーなソース。好みは分かれると思うけど、美味しい☆


Me encontre Dr. Karonte cerca de aqui
屋台で野菜を売ってます。この近くでシン・カラのお父さん(Dr. Karonte)に遭遇!マフィア顔でした。


tome una enchilada en Sanborns
サンボーンズというレストランでお昼ごはんエンチラーダス。チーズたっぷりのソース


enchiladas
またまたエンチラーダス(モーレソース)。ごはんが添えてあってボリューム満点。カレーっぽくておいしい


ensalada de queso de oaxaca
オアハカ産チーズのサラダがめちゃおいしい


お肉とマッシュポテトのミルフィーユ。おいしいけど量が多い!


cerveza oscura
Indioというダークビール。美味しい


おつまみビーンズ


cerca de Basilica de Guadalupe
グアダルーペ寺院の近くのおみやげ屋台。クラシックなクッキーを購入。水分がまったくない。


compre un flan en OXXO
メキシコのコンビニOXXO(オクソ)でプリン。コンビニのだけど手作り感満載★


マルコ・コルレオーネがキャラを務めるアイスチェーン


puesto de frutas
このように屋台で果物を売っている


tuna
サボテンの実。梨っぽい。ジューシーであっさりした甘み


puesta de mangos
マンゴーおいしいよ


このようにチリとレモンと塩をお好みでかけて食べると、思いのほかおいしい。スイカに塩と同じ感覚?


コーヒー屋さん


このコーヒーなんていうんだっけ?カフェモカだっけ?チョコチップをトッピング。あらかじめ超甘い


posole
ポソレというトウモロコシと鶏肉のスープ


puesto de comida ligera
駄菓子屋さん。上からぶら下がっているのは葉っぱの形をしたアメ


同じく駄菓子屋。手前のでっかいコロンみたいなやつが美味しかった☆


puesto de jugos y frutas
ジューススタンド。果物を選んでその場で作ってもらう。


黒いタコス。のっているのはチーズとサボテン(nopal)。茎わかめみたいでおいしいよ☆


fui Taqueria CHABEL
有名なタコス屋さんに行きました☆


オーナーのJesusさん


ここのタコス美味しかった!豚肉のゼラチン質部分


トッピングタワーが出てきたよ。ライム、生の玉ねぎ、チリ、パクチーなど


店内ルチャまみれ

Me encontre el hermano de Sin Cara
ここでシンカラのお兄さん?に遭遇した


puesto de helado en Taxco
アイスクリームスタンド。知らない果物のアイスで盛り上がる


pasteles
ケーキ売ってた。しっとりしててサバランみたいでおいしかった


ピザをデリバリー&コンビニでビール買って晩ごはん☆


豚肉の煮込み。見きれているのはハイビスカスのジュース(agua de jamaica)


これも豚。frijolesという豆のペーストが添えてある


fruteria de Taxco
果物屋さん。果物ホントおいしかったな〜


お察しの通り、メチャウマだ。


desayune en Vips
Vipsというファミレスで朝ごはん


omelet de queso de oaxaca
オアハカのチーズのオムレツ


ライムのパイ。甘くて酸っぱくておいしい☆


マキシモちゃんがタコス屋に連れていってくれた!


具はパストール(pastor)といって、でっかい豚肉を棒に刺してぐるぐる炙ってるアレとか。見きれているのはagua de horchataというお米のジュース。衝撃のおいしさだった。スパイシーで冷たい薄めの甘酒って感じ。


つけあわせはラディッシュ、サボテン、キュウリ、チリなど。ライムを絞ってチリをかける。葉っぱはパクチーとナゾのハーブ


tamales
「タマレはもう食べた?」とマキシモがおみやげにくれた。トウモロコシの蒸しパン?ちまき?みたいなもの。コレはチリが入ってて辛い。もうひとつはモーレ味。熱々でおいしい☆


sopa de pollo
屋台で食べた鶏肉のスープ。ベースのスープにはひよこ豆と米が入っていて、中身の鶏肉は部位を選べる。チリや玉ねぎ、パクチーをトッピング。ライムを絞って食べる。


ルチャ会場で飲んだビール。ソルティ・ドッグの要領で、チリパウダーと塩が塗ってある。やたら酔う


聞いて驚け。マスク職人のローリンがくれたポテチ(食べかけ)だ。うれしくて袋が捨てられず、ベッドが粉だらけになるという悲劇にみまわれた。


cool man me dio una manzana
独立記念塔にて。小さいりんごを持っているのがお分かり頂けるだろうか。素敵な男性がくれたんだよフフフ


flan de mexicano es sabroso
メキシコのプリンはおいしいね〜


arroz con leche. era un postre mas sabroso. alguien digame la receta por favor!
アロス・コン・レチェというお米のデザート。甘くて冷たくて、スパイスが効いてておいしい。


メキシコを発つ日。空港まで送ってくれた人と一緒に、クリスピークリームドーナツ。
なみだあじ。

 以上、今回は「おいしい」しか言わないブログでした☆
 メキシコでは「支払いは男性」がフツーみたいで、ごちそうになりっぱなし。ありがとう!
 いつかおいしい日本食をごちそうします☆

じゃあまたらいシュー☆

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2012年10月22日の月曜日を
お知らせします

まだまだ引っ張るメキシコ旅行記。
今回は、メキシコで観たメタリカのライブに心底怯えたワタクシが、現地レポートをお届けします。
まさかの4,000字。
画像はナシでお見舞いするぜ。

メキシコ旅行記
ゆきて還りし物語 第6回
METALLICA
  live in Mexico

 なぜ私は天に向かって拳を突き上げ叫んでいるのか。ひどい時差ボケで意識は朦朧、足元はフラフラだ。
 ここはメキシコシティ。眼前にはスタジアムに満員の聴衆、そしてその先にはあのレジェンドがいる。メタリカだ。
 多感な年頃、畳の部屋でふすまを閉め切り、ウォークマンの音量をひたすら上げた日々よ…!

 生憎の豪雨にも関わらず会場周辺は人、人、人だ。午後8時30分と日本に比べて遅い開始を待つ客に加え、チケットは買えそうもない不良っぽい若者、セクシーな太った女の子、人殺しのような人相で警備に当たる警官、マフィア風のダフ屋。白いビニール袋を持った人は何の商売だろうか。明らかに警察を避けているようだが。
 道の両側に50以上は並ぶ露店では、ロゴTシャツやマグカップほか、絶対に許可は取っていないであろうメタリカグッズを売っている。
 ヤングからおばあちゃんまで、実に関係者の層が厚い。30年超の演奏活動の底力を見る思いだ。

 会場であるPalacio De Los Deportesは1968年オリンピックのために建設され、スポーツや闘牛のイベントに加え、数多くのアーティストが訪れてきた。キャパシティは2万人超。
 今回のツアーは8日間のすべてソールドアウトだという。メキシコの首都そして最大の都市(人口約2000万人)であることを差し引いても述べ16万人の動員とは、けしからんほどの人気だ。

 押し問答の末、ダフ屋から受け取ったチケットは2階席で、定価407ペソ(約3000円)のところを1000ペソ(約7000円)。高いのか安いのか分からないが知ったことか。アイムフロムジャパン。金ならある。

 アリーナ内に飾ってある巨大パネルは来訪アーティストのもの。キッス、ジューダス・プリースト、メガデス、AC/DC、マドンナ、最近ではレディ・ガガ。
 やはりメキシコでは「激しい」か「セクシー」が人気かと眺めていると、その中に往年の美少年ロバート・スミスも。
 受け入れられたか心配だ。

 さすが年季の入ったアリーナ、雨漏りがひどい上、窓ガラスもない。
 確かに周辺は、盗んだバイクで走りそうな若者ばかりだ。火薬とガソリンを大量に使う演出のため、割れたガラス窓は黒い布で覆ってあるものの、雨と風が吹き込み、なかなかに荒んだ光景だ。これではヒートストーンにウォーターではないだろうか。引火して炎に包まれる会場が一瞬、脳裏に浮かんで消えた。

 さて、ギグの始まる時間だ。地元ハードロックバンドのオープニングアクトを経て、会場の温度は万全を越えて上がりすぎ、1階スタンディング席は既に暴動の様相を呈している。
 当局の介入を恐れ始めたとき、暗い静寂のステージに最初の音が!
 満を持してメタリカ様の登場だ。

 360度型のステージの周りには、溢れんばかりの人だかり。入江のように入り込んだスペース(いわゆる砂かぶり席か)もあり、隙間なく観客が押し寄せている。
 そこに1人ずつ現れ、演奏し始めるメンバー。最終日にも関わらず、連夜の疲れを微塵も感じさせない音圧に、1曲目からフルボルテージだ。登場した瞬間でこの空間支配力、カリスマ以外の何者でもない。

  

 熱狂のセットリストは以下の通り。

1.Creeping Death
2.For Whom the Bell Tolls
3.Fuel
4.Ride the Lightning
5.One
6.Cyanide
7.The Memory Remains
8.Orion
9.Sad But True
10.Welcome Home (Sanitarium)
11....And Justice for All
12.Fade to Black
13.Master of Puppets
14.Blackened
15.Nothing Else Matters
16.Enter Sandman

<アンコール>
17.Am I Evil?
18.Seek & Destroy

 大盤振る舞いだ。

 この盛り上がりの一端を担うのが、ステージセットの凄まじさだ。
 機関銃の掃射音とともに、花火が飛び散り、ステージから噴出されたガソリンが燃え上がる。巨大な棺桶型モニターが6個、天井から降ろされ、閉じ込められて必死にもがく女性の映像が流れる。実に禍々しい。

 しかし既視感があるのはなぜだろうか…あっこれは!『デス・マグネティック』のジャケットではないか!?おいおい待ってくれ、じゃあ他のセットも…!
 ステージから白く巨大な十字架が生えてきた…『メタル・マスター』!
 巨大な便器も登場。中からは剣を握りしめた拳が突き出される…『Metal Up Your As』!
 天井から巨大な椅子とともに稲妻発生マシンが登場、バシバシと青い稲妻が迸る…『ライド・ザ・ライトニング』!
 演奏する背後でクレーンが動き始め、10mはあろうかという巨大な白い彫像を組み始める。出来上がったその姿は…『メタル・ジャスティス』!
 アルバムジャケットの実体化シリーズ、圧巻だ。すべてがトゥーマッチ。戦慄を覚えるほどだ。

     

 そして戦慄の理由は、常識外れな大きさ、禍々しさ、派手さによるものだけではない。
 メキシコシティ最終日のこの日、実はステージセットの不具合も多いのだ。

 ギターのネック(?)をモチーフとした巨大な柱が突き出てくる…ハズが1本だけどうしても途中から動かない。裏方が緊急出動だ。10m超のその大きさを考えると、一歩間違えば大事故だ。
 かと思うと今度は、天井から現れた稲妻発生マシンが動かない。裏方のオッサンが長い棒を携え再出動。大忙しだ。8DAYSの疲れをまったく感じさせない演奏だが、過酷な演出によりセットは確実に疲弊している。あの棺桶がもし落ちてきたら…!?
 メタル・ジャスティスの彫像も、ようやく組み上がったかと思いきや、即大破。メンバーは動じることなく演奏を続けているが、どこまでが演出で、どこまでが事故なのか判然としないまま戦慄のライブは進む。

 そして終盤、まるで世界の終わりの日のように、すべてのセットが破壊されていく。凄まじい轟音とともに柱は折れ、爆発が起こり、天井から人間が手足をばたつかせながら落ちてくる。破壊し尽くされ、人っ子ひとりいなくなったステージは暗転。ジェイムズ・ヘッドフィールドのMCが始まる。

 しかし何かが変だ。暗闇のステージで、懐中電灯の灯りがチラチラ。人がせわしなく動いているようだ。目を凝らすと、1箇所にスタッフが集まっている。先ほど落ちてきたスタントマンの一人が、まだそこに倒れているのだ。ピクリとも動かない。
 最終的に白衣の人々によりタンカで退場したのだが、果たして演出だろうか。
 それでもジェイムズのMCは続いている。なんとか演奏を続ける手はずが整ったとか言っているではないか。

 大丈夫だ演出だ。ステージに刮目だ。

 満を持して再登場したメンバーは、全員マスクをかぶっていた。メキシコのプロレスラーが着用しているアレだ。メキシコと言えばマスクだ。間違いない。当然の拍手喝采。飛び散る怒号。
 そして天井から降り注ぐ巨大バルーン(もちろん暗黒色)に限界まで熱狂するスタンディング席。
 人死にが出なかったのが不思議なぐらいだ。

 「大御所」と呼ばれる人々のライブでいつも感じるセンチメンタリズムはない。多感な年頃にあんなに聴いた"エンター・ザ・サンドマン"ですら、微塵も懐かしさを感じない。メタリカは、現在進行形で聴くものに戦慄を与え続けている。
 CDで聞いていた音楽は、彼らの世界のほんの一部分でしかなかった。超現場主義。ただ座して聴くための楽曲ではなく、空間を作り上げるための劇場音楽なのだ。
 メタリカ劇場で、本人たちが演奏する贅沢なBGMで大合唱するメキシコ人の大群とともに、参加型のインスタレーションを堪能したメキシコの夜だった。

それではみなさま
メタルな一週間を☆

またらいシュー☆

毎週月曜新聞 悪のロゴ
2012年12月3日の月曜日を
お知らせします

前回の更新から一ヶ月、無断で秋休みをいただいておりましたが、そろそろメキシコ旅行記もシメどきですね?しつこいね?

メキシコ旅行記
ゆきて還りし物語 最終回!

 さて、シメるにあたり、まずはこの旅でおこった負の側面をご紹介しよう。
 3年越しの夢だったメキシコ旅行だ。強盗にも盗難にも病気にも備え、準備は万全だったハズだ。しかし旅に影を落とすのは、そんな大きなトラブルじゃない。

 笑い話にするにはパンチがなく、思い出にするには痛々しい、そんな小さな失敗や困難が、旅の幸福度を下げるのだ。

 まず最初の失敗は「地図を忘れた」だ。
 リサーチして集めておいた情報を、パソコンのデスクトップ上に置きっぱなしにしたのだ。「明日まとめてプリントアウトしよう」と思ったのは覚えているが、私に「明日」は来なかったようだ。
 飛行機で気付き、奥歯を噛み締めた。

 また、いくら尋ねても、どうしても質問の答えをもらえないケースもあった。

5秒待ってやる

 と私の中のスタローンが言ったが、答えは得られなかった。なぜなら相手がチャック・ノリスだったからだ。
チャック・ノリス・ファクト

 日本から、情緒の乱気流メールをぶつけてくる人もいた。
 八つ当たり、謝罪、甘え、励まし…など上下に撃ち分けながら5発づつだ。
 そんなコンボを食らって立っていられるのは超人ハルクぐらいだ。しかし相手は攻撃の手を緩めない。レフェリーの静止はまだか!?セコンド、早くタオルを!
 最終的に20連コンボとなった。とっくにシンデイるゾンビ(私)にショットガンの無駄遣いはやめてあげて。

 とある日は目の前で、小柄な邦人女性が異国のお兄さんに殴る蹴るの暴行だ。
 彼女はふと攻撃をやめ、私の肩に手をポンと置き「キミが原因なんだからね☆」

さんをつけろよデコスケ野郎

 とココロの金田が叫んだが、どうやら彼氏の浮気相手が私とのことである。

 寝耳に水だ。

 と、さまざまなしょっぱい困難が、旅の前半にはあったにはあった。
 しかし、メキシコ旅行は楽しかった。

 旅の後半にかけて、どんどん素直になって行った。「疲れた」とか「眠い」とか言っては甘え、時には「突然スキップ」でメキシコ人を笑わせた。完全にいつもどおりだ。

 10年前のシベリア鉄道旅行の際は、気性が荒く向こう見ずで、命など惜しくなかったテリブルな私だが、今は違う。
 生きているのが楽しく、友達がたくさんいて、日常生活が大切だ。 待っている人が日本にいる限り、五体満足で帰宅する気満々だ。

 そうすると必然的に、危ないところは一人で歩かないし、帰る手段が確保できない場所には行かない。
 行動範囲が狭まって当然だ。
 まあ、これは怯えすぎだった。メキシコシティはそんなに危ないところではない。

 しかし、それでいいのだ。
 10年前の自分は、一人で危険を犯せることが誇らしかったが、今はどうでもいい。

 メキシコシティにはたくさん教会がある。美しい彫刻が施された壁面、そこから唐突に育つ植物、豪華絢爛な内装…見どころは全部だ。建築好きなら一日中いても、幸せの絶頂だと断言しよう。

 この日、その大きな礼拝堂の中は荘厳な空気であふれていた。老神父の祈りの声が響く。礼拝中だ。
 9割の人がカトリックを信仰しているというメキシコ。観光客の訪れる教会でも、日常的に礼拝は行われている。
 邪魔するのも気が引け、退席しようとしたが、この日同行してくれたメキシコ人が大丈夫だというので、礼拝に列席。

 全員が静かに神父の声を聴き、時折、祈りのコトバを唱えている。
 隣のメキシコ人も先程までの陽気さがウソのようにすっとマジメな顔になり、お祈りを唱えている。

 何かの合図か、参拝者の全員がひざまずき、お祈りを始めた。見ると礼拝堂のベンチには、膝をつくための小さな足場のようなものが付いている。
「(お客さんだから)椅子に座っていれば大丈夫だよ」と言われ座っていたが、作法を真似ることも失礼にはあたるまいと、私もひざまずく。

 祈りのコトバは知らないので、膝をついて耳をすます。静かな神父の声を聞いているうちに、激しい出来事の連続で泡立っていた心が、だんだんと静かになって行く。消化できなかった出来事や失敗が心に浮かんでは、過去の彼方に消えていく。

 祈りのコトバが体を通り抜け、心の澱をすくい取って行った。と言うとかっこつけすぎかな。心が洗われた。

 どれぐらい時間がたっただろうか、みんなが唐突に立ち上がり、周囲の人々に握手を始める。
「お互いの幸せを祈っている」とのこと。
 世俗にまみれカトリックでも何でもない私ですが、握手され、握手を返し、その祈りの中の一員とさせてもらった。実のところ感動してちょっと泣いちゃった。

 礼拝を一緒に過ごしてくれたメキシコ人と友達になれたことがうれしかった。いろんな出来事で頭が混乱していたこのとき、いちばん私に必要だったのは、この人だったんだな。
OH! コレハコイデースカ?
気づくのが遅すぎたようだ。

まあそれは置いといて。

そういえば、チラシを配ってるお兄ちゃんも「Buen dia!」と言いながら渡していた。
「見ず知らずの人の幸せを祈る」ということが習慣としてあるんだ。
メキシコは危ない国なのかもしれない。
でも、祈りの文化が根底にある国でもある。
それを知った。

-*--*--*--*-

ほかにもいろいろ行ったよ。

 プチ秋葉原のようなビル。日本のアニメのDVDやフィギュアを鬼のように売っていて、ゲームセンターやフードコートも併設。なぜか男の子同士のカップルがたくさんいた。

 怪しげな市場。まじないに使う葉っぱや石やお香や動物の剥製も売っていた。民芸品をたくさん売っている市場では友達へのおみやげを買い歩いた。

 日本食のチェーンの行ったし、タコスやソパの屋台も食べ歩いた。

 ディエゴ・リベラの壁画を観た。ボランティアのガイドのおじさんがイロイロ教えてくれた。その壁画が展示してある部屋に入ると、まず正面のガイコツの女性に話しかけられる。今日一日が素晴らしいものになるように、と。この人がいるから、絵を見に来た人はみんな良い日が送れるんだって。
 ほかにも博物館や美術館にいくつも行った。
 ZARAでヨーフクを買い、スタバをおごってもらうなど、日本でもしない「普通のデート」をしたり。
 乗せてくれた人の車が壊れて、レッカーを待ったり。レッカー代は驚きの50ペソ(約300円)。日常的なトラブルなのでしょうか。ははは。
 映画も観に行った。「バットマン ダークナイト・ライジング」と「エクスペンダブルズ」。英語なら分かると思ったが、バットマンもベインも音声加工されててワカラン。エクスペンダブルズに関してはコトバは必要なかった。

 夜遊びして宿に入れず、メキシコ人のおうちに泊めてもらったり。ママが朝ごはんを用意してくれる間、昔の結婚式の写真や、恋人時代のパパ&ママの写真を見せてもら う。そして緑色の鳥とおしゃべりをした。りんごをシャクシャク食べていた。かわいい鳥。

 カミノ・レアル・ホテルで人を待った。

 野生のハチドリを見た。

 アレナメヒコで出待ちもした。

 知らない駅で一人、取り残されたりもした。

 シンカラのお父さん、つまりドクトル・カロンテに会った。お兄さんにも会った。

 メキシコに行く前にすごく相談に乗ってもらった人もいる。行ってから世話になった人もいる。中には今、連絡を取れない人もいるけど、生涯の友達でいられる気がするな。片想いのケースもあるかもしれないけど。ははは!

 初めてのメキシコ旅行は終わったけど、なんだか終わった感じがしない。成田空港に降り立ってから、もう3ヶ月もたっているのに。インドに行った友人がダメ人間になってしまったが、私もそれと同じだろうか?
 でもいいことばっかり起こるんだ。メキシコから帰って以来。
 私はすごくいいものを手に入れてしまったのかもしれない。

 あっそういえば手相を観てもらった。手相から読む私は…
 優しく、熟考しすぎてチャンスを逃がす傾向、ダメ男を好きになる傾向があり、モテて、先祖に守られており、運気が良く、しかし健康に注意で、結婚線は2本あり、仕事は続けたほうが良いそうだ。

 いろいろとつじつまが合わない。
 しかし、それが私だ。
 みんなそうだろ?

そういうわけで、メキシコ旅行記はオシマイ☆

来週はまさかの!
まこっちゃんの4コマが復活だよ。

じゃっまたらいシュー☆


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