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2014.11.13


IT
こわすぎて遠くから観たい『IT』

夜更けのハカイダー

 最近、短歌を作り始めた。

 私はライターをしているので、毎日何かしら書いている。書いていない時は読んでいる。
 ライターになる前はメモ魔で、やはり何かしら書いていた。書くのは、楽しい。

 子供の頃に好きだったのは体育と音楽と作文で、苦手なのは社会、嫌いなのは図工だった。覚えることと枠組みのない自由が嫌だった。

 体育は枠組みがあるからいい。50メートルを速く走れと言われれば、炎のランナーばりに練習するし、ボールを遠くへ飛ばせと言われれば、肩も壊れんばかりにトルネードだ。

 音楽もいい。5本の線の上に整然と音符が並ぶ。美しい旋律と、そうでないもの、その2種類しかない。単純明快だ。鍵盤に情熱を叩きつけてやる。ジャーン。むろん私は後者だ。

 作文はさらにいい。400字詰めの原稿用紙に収まりさえすれば、何をしても構わない。自分の中の怪獣が叫びながら、人類の創った文明を踏み潰すように、マスを埋めた。ガオガオ。

 日本語は頑強にできていて、ちょっと乱暴に扱ってもすぐに立ち上がってくる。ぬぬ、こやつ、やるな。主語と述語を入れ替えてやる。むむ、まだやるか。先生に怒られるけど知ったことか。

 枠組みのある丈夫なものをぐしゃぐしゃにするのはなんて楽しいんだろう。不謹慎な背徳感に、高揚する。
 心の尾崎豊が、震える手で日本語の窓ガラスを1枚、また1枚と割っていく。声に出して読みたい日本語…そんなものはこうしてやるぞ。うへへ。形あるもの必ず壊す。わはは。吾輩は猫が好き。人間なんか合格だ。

 こうして日本語と無制限一本勝負を続ける以上、短歌を作るのは必然だったと思われます。このの、5・7・5・7・7というルールをですね…うへへ。

   美しい言葉の瓦礫のてっぺんでひとり見上げる宇宙の闇を

 まだまだだな。
 いつか美しい日本語、だったものの瓦礫の上で、自らの破壊大帝ぶりに満足してみたい。そんな呪われた暗い情熱でもって、今夜も破壊工作をしているわけです。
 つじつまの合わない愛情に見えるだろうが、日本語よ、お前だってこんな私が好きだろう?


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