magical san diego 

シェリフに停められる

 先ほどからどうもおかしい。1台の車に後をつけられている。車体に文字が書いてあるようだが…

S ・ H ・ E ・ R ・ I ・ F ・ F …

 シェリフ! つまり警察!

 今でこそゴールド免許だが、この黄金の輝きを手に入れるには実は13年を要した。その間、道路建設には資金面でかなり貢献したと思っていただいて差し支えない。もちろん免許証を一時的に停止されたこともある。
 私は警察、消防、自衛隊など直接的社会貢献度の高い公務員が大好きだが、警察に関してはそれが片思いと思わざるをえない。
 この星の道交法は難しいのだ。

 というわけで、バックミラー越しにシェリフを確認した瞬間は、平たく言うと「戦慄」だった。

 いや待て、おちけつ。落ち着け。ターゲットは他の車じゃないか? 試しに車線変更だ…つ、ついてくるぅー! よし、遅いトラックの後ろにつけてやり過ごすんだ…ま、待ってるぅー!

 かくして路肩の広い場所に出た途端、パォッとサイレンを鳴らされたのであった。

 えーと、こんな時はどうするんだっけ、手はハンドルの上でじっと待つんだよね。
 バックミラー越しにシェリフが車を降り、近づいてくる。ココロの見張り台で少年兵が震えながら鐘を打ち鳴らす。
 怖いポリスだったらどうしよう…。それよりここはアメリカ、銃で狙われるかも…。いや、もっと怖いのはポリスに変形したターミネーターだったら…キャー!

 という不安はよそに、免許証とレンタカー書類の確認ののち「日本の学生さん? 違うの? 車間距離に気をつけてね」というやり取りで解放されたのであった。
 午前中に行った有名スピリチュアルスポット「セドナ」の妖精が護ってくれたのかも…ありがとう! 岩とサボテンしかねえなとか思ってゴメンネ!

 なぜこんなに怖れたかというと、実は数日前の伏線があったのです。

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 1日楽しくドライブし、沈む太陽が空を美しく染めはじめた時、ふと愕然とした。ライトのつけ方を知らないのだ。
 焦るなきっとハンドル周りだ。日本だとこのへん…ない。…逆かな…ない! だ、誰か大人のひと来てー!

 高速のパーキングで慌てていたところを助けてくれたのは、南米系のミゲルくんだった。

「hola〜どうしたの〜☆日本人? 僕の元カノ大阪の子だよ超かわいかったな〜☆なにライト? ほらここ見てごらん? もっと近くに寄って、キスしてあげるから。ハハハ冗談だよ。ここにオート点灯って書いてあるでしょ?」

 と、早口でマシンガントークの春風亭ミゲルくんは、キリッとした目元に甘い笑顔のムービーカメラマン。モンタレーの山でスカイダイビングをした帰りだそうで、なるほど、彼のでかいRV車は泥だらけだ。

 スペイン語圏の人は総じて親切で、彼もそう。私の行く先をiPhoneで確認してくれる。しかしそのiPhone画面には派手にヒビが…。

「ひどいだろ? 警察にやられたんだ」

 えっ、警察に? 守ってくれるハズの人が、なぜ?

「レイシストだよ」

 聞けば身分証明を持っていなかったか見せなかったで、車も汚れているし、何らかの疑いをかけられ手荒な扱いを受けたらしい。
 ひどい。ひどいって英語でなんて言うの? ホリブル? テリブル? もっとひどくてきたない言葉はないの?
 でもミゲルくんは「ひどいけどしょうがないよね」という感じ。

 アメリカを旅して、人種の多さに改めて驚いた。バスやメトロ、公共施設の表示はほとんど英語とスペイン語の2ヶ国語。サンディエゴでは人口の40%がスペイン語を話すというし、そのあと訪れた所ではその割合は70%という所もあった。

 それだけ多くても差別する人がいて、さらにしょうがないと納めるしかない現実があるんだな。ミゲルくんにも小さい頃からそんなことがたくさんあったのかも…。

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 でもミゲルくんの笑顔に暗さはまったくなく、立派な仕事をし、困ってる外国人には親切にできるなんて、この人はすごいなと思ったのでした。悪意の負の連鎖を彼が止めてる感じがした。人間力ってこれのことか。
 がんばれ…ちょうがんばれ! 応援するよ! でも肩を抱くのはやめてくれたまえ。

 その夜、ミゲルくんから届いた赤面するような熱烈メールに返信はしていないが、それはまた別の話。

 海を越えた国のレイシストには、豆腐の角に頭をぶつけるように呪いをかけておいたから、ミゲルくんは安心して仕事して素敵な女の子を口説いてください。

 あっ豆腐はナイか。じゃあ今後すべてのホットドッグからケチャップがTシャツに飛び出しますように。それか油性マジックのフタを失くして困れーーー!

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 さて、実は3月末から4月にかけて、再びアメリカドライブ旅行に行くのだが、シェリフに停められるパート2をお届けするハメにならないよう、皆様方におかれましてはお祈りいただけますようお願い申し上げます。

 ではまたらいシュー。


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