午前中はメキシコのティファナで過ごし、歩いてアメリカに帰国。国境から路面電車でダウンタウンに着くと正午を回っていた。
特に何を見るかは決めていない。駅のツアーインフォメーションの老紳士に聞くと「ミッション・ビーチがオススメであろうぞ」とのこと。的確過ぎる交通指南でスムーズに海に。翌日は早朝のフライトでラスベガスに行くため、空港で夜を明かすつもりで夜までビーチで過ごし、最終一本前のバスでサンディエゴ国際空港に着いた。
まずはカフェで甘くて冷たい飲み物と思ったが、サンディエゴ空港の店じまいは思いのほか早かったようでどこも閉店。照明も暗くなりポツーンと立ち尽くしていたら、背の高い空港職員がゆっくりと近づいてくる。
ですよね、ガイコツ&ヘビの不良柄Tシャツにドクロのキャップ、ウエスタンブーツに大荷物で無人のロビーに立ち尽くしていたら、ちょっとした不審者ですよね。
「どうかなさいましたか?」
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いえ、あのあのあのお店がもっと開いてると思ったんですけど、えっと朝イチのフライトで…
ああ、その窓口なら一度外に出ないと。コチラですよと歩き出す。
足の長さの差により小走りになる私を見て彼は歩調をゆるめ、どちらからいらしたんです? と聞く。東京からだと答えると、いいところですね、実は私も一度行ったことがあるんですと口調が柔らかくなる。でもアニメやゲームは殆ど知らないという彼に、じゃあどうして日本にと聞くと、少し考えて彼は言った。
「だって、マジカルじゃない?」
彼の言葉に、まるで妖精のゴッドマザーが杖をキラリと振ったように、劣悪な労働環境と狭隘な住宅環境を誇るホームタウンがキラキラとマジカルな国に姿を変えていく。ビル街に昇る朝日の清々しさ、コンクリートの隙間からすくすく育つ草木の魔法の生命力。
そうなんです、私、とっても素敵な国から来たマジカルレデイなんです。
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