アンダレー 2021.8.13

野生の文学お買い上げありがとうございました

だいたいにおいて私の行動には理由はなく、あっても「面白そうだから」ぐらい。
そんな感じで小説を書いた。
原稿を書く仕事と家事が終わったあと、おもむろに適当な紙を広げ、「ヘヘヘ…」と悪い顔でなぐり書きした。コピー用紙の裏紙とか半端なルーズリーフとかがどんどん汚い字で埋まっていった。楽しかった。

私はプロのライターなので、仕事の原稿は丁寧に書く。媒体や読者に合わせて適切な言葉を選び、偏見や差別的な表現がないかチェックし、わかりやすさに気を配る。ちゃんとしたオトナとして原稿を書く。
でも、もともとはそんなちゃんとしていない。思い立って川に飛び込むタイプ。塀から飛び降りるタイプ。突発的に思いついたことを言って1人でバカ笑い。ときどきは友だちも笑う。そしたら大成功、と思う。
そもそも文章を書くのは、友だちを笑わせるため。もし友だちが元気なかったら、笑って元気になればいい。そのぐらい。

そんなわけで原点に立ち返り、誰にも何にも気を遣わず、誤字脱字上等、統一表記など無視じゃ、って勢いでバーっと書いて、情熱の炎をメラメラと燃やしながらコンビニに行って大量にコピーしてホチキスで留めた。それから「売りまーす」と告知した。10冊ぐらい売れればいいなと思った。
そしたらいっぱい注文をもらった。SNSなどを開くたびに「くださいな」というメッセージが来ていて、そのたびに嬉しくてその場に卒倒したので膝は血まみれだ。興味持ってくれる人、いるんだな。ありがとうって思いながら封筒に入れて送った。
しばらくしたら感想が来始めた。SNSなどを開くと来ている。その場に倒れ込んで泣いた。膝は血まみれだ。

今回、書いたのはプロレス小説。最初は殺し屋トーナメントの話を書いていたのだけど途中から枝分かれしてプロレス小説ができた。楽しかった。最初は名前も決まってなかった登場人物が、毎晩、適当な紙を開くたびに新しい行動を起こした。なんでそんなことすんの? って聞いたらこっそり教えてくれた。へー、なるほどね。きみらなんでタッグ組んだの? そしたらこっそり教えてくれたからラストシーンに使った。書いていて楽しかった。登場人物が好きにやってくから、書き留めるのが大変だったけど、書きながら、これは誰かの意見とか聞いちゃいけないやつだなと思った。これは友だちへのプレゼントにしよう。元気が出るやつだから。

でも元気が出たのは私のほうだ。感想ってうれしいもんだな。ライターの仕事ではあまり感想はもらえない。自分で良し悪しを判断してる。基本、良しの原稿しか出さないしさ。
でも良いか悪いかわからない野草みたいな小説を買ってくれる人がいて、感想まで送ってくれる。野生の文学に対する野生の感想って感じで、全部が違って、全部がキラキラしていた。SNSを開くたびに画面が輝くようだった。これはただのブルーライトじゃねえ。スーパーすごいブルーライトだ。世界が平和になるタイプの。あるいは悪を滅ぼすタイプの。
全部スクショしてプリントしてノートに貼った。
それから、仕事の原稿で煮詰まったらそれを開いて見る。元気が出る。そうだ、このインタビューではこれを伝えようと思ったんだ。そこからずれなければ話した人も読む人も元気出るだろう。
仕事も小説も一緒だ。私はジャーナリストじゃなくてライターだ。人の気持ちを人に伝えるために働いている。芸能人にも作家にも一般人にも心には芯があり、伝えることがある。それを聞いて伝えるのが私の仕事。人の話を聞くのは気力がいる。毎回、終わると倒れそうになってる。でも気力を使う価値がある仕事だと思っている。

まあ、そんなことを思って働いてたら8月も半ばになっていました。お礼が遅くなりましたが、みなさままじでありがとうございました。一生覚えておきます。
生きるのはシンドイこともありますが、やってやりましょう。ぜ!

そしたらあれできめてくださいよ,アルパのマイクに聞けばいい。
■プロレス小説『そしたらあれできめてくださいよ』(左) 美形の人気レスラーとベテラン悪役レスラーの友情と、人生の燃やす何か、みたいな話。舞台はメキシコのようなどこか。
■旅日記『アルパのマイクに聞けばいい。』(右) ロシアのシベリア鉄道旅行記と、アメリカドライブ旅行記。とんでもない目にあったり笑ったり生き直したりします。
またいずれ、お届けする機会があればうれしいです。


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