2021.2.24

女たちはチームの危機を救えるのか!?寄せ集め女子サッカーチームの奮闘を描く『クイーンズ・オブ・フィールド』

試写で拝見し、こいつはオススメだ〜となったのでレビュー書きますね。ネタバレなしなのでご安心を。


【あらすじ】90年の伝統を誇る地元サッカーチーム。試合中の乱闘騒ぎで主要メンバーが出場停止になる大ピンチに。チーム消滅の危機に立ち上がったのは、選手の妻をはじめとした女たち。残り3試合でどうにか1ポイントを獲得するべく、急遽、女子チームとしてリーグに出場することになる。

女性活躍やシスターフッドといった女性にとっての希望を描くのではなく、現実を見据えたうえで男女ともに楽しめる物語を見せてくれる点が素晴らしい。

まず、意識の高い男性は一人も出てこない。ジェンダー観が前時代的な”フツーの”中高年男性ばかりなので、選手も監督もオーナーも観客も、女がサッカーやると言えばさまざまな拒否反応を示す。”俺たち”の神聖なるフィールドに女が進出するとなれば、偏見まみれの野次も飛ばしたくなりますわな。ハイハイ、わかるよ。子供が学校で問題を起こせば、ぜーんぶ妻のせいだよね、ハイハイ。

しかし、最初はあからさまに拒否反応を示した男たちが、徐々に考えを改めていくところがこの映画のひとつのみどころ。

とくにオーナーの変貌は快感。「女はかくあるべし」という強固な理念を持つ男性は、同時に「男はかくあるべし」という自制にも縛られている。そういう意味では信頼できるのが、古い価値観を持ち続ける男性なのだ。あの委員会の元会長もこうすればよかったのに〜という謝罪からの罪滅ぼしを楽しみに、序盤のクズっぷりは我慢して見続けよう。

ある者は態度で示し、ある者は真っ向から謝罪する。100人いれば100通りの改めかたがあるものだ。こと男女の分断が取り上げられがちな昨今、フツーのオジサンと女たちが信頼関係を築くさまは、心洗われる思いがする。「男」「女」ではなく、普段から「人」として付き合ってきたからこそ、乗り越えられる壁もあるのだ。

もうひとつのみどころは、経歴も性格も体型もちがう多様な女たちが、それぞれの美徳を炸裂させるところ。エースストライカーのサンドラは有言実行の女。かっこいいぜ。ステファニーの精神力の強さには、新時代のリーダーシップのありかたを見せつけられる。経営者のみなさん、こういう女性を登用すれば間違いないですよ!

でもこれって別に、特別な女ばっかじゃないよねと、女なら思うのでは。大好きな友人たちを、ひとりずつピックアップしたみたい。肩肘をはらず単に女の個性を描くだけでも、こんなに胸のすく物語が立ち現れるのだ。

監督のフラットな眼差し、人間への理解の深さが、この物語を可能にしたのだろう。女性を描く手腕のスゴさといえば、ポール・フェイグ監督(『ゴーストバスターズ(2016)』、ジェイソン・ライトマン監督(『JUNO/ジュノ』)を思い出すが、この作品のモハメド・ハムディ監督も覚えておこう!

肝心のサッカーの試合(3試合)もしっかりカタルシスがあり、最後の試合は前のめりで観戦した。全てが終わったのち、エンドロールのスラブ調の楽曲が悠久を醸す。それを聴きながら、女は楽しい、女はいいものですよ、と自己肯定感に包まれた。いい映画。


『クイーンズ・オブ・フィールド』
3月19日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国ロードショー
copyright: 2019 ADNP ? KISSFILMS ? GAUMONT ? TF1 FILMS PRODUCTION ? 14EME ART PRODUCTION ? PANACHE PRODUCTIONS ? LA COMPAGNIE CINEMATOGRAPHIQUE
公式サイト https://qof-movie.com/


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