2021.1.11

【短歌日記】2021年1月1日〜11日

1月1日

元旦は早起きして初日の出見るぞー! そんな意気込みでバタリと寝て、起きたら11時だった。よく寝た。

実家から届いたおせちを並べて、お雑煮を作って、お皿を並べて、はい、いただきますって食べて、終わったら目の前に大量の汚れた皿。今年もこれを片付けながら生きていくのか。季節の行事には女の仕事が多すぎるんじゃないの?

季節の行事に限らず、やらないとスタート地点にすら立てないことが女にはたくさんある。保育園とか、PTAとか、弁当作りとか。洗濯とか皿洗いとか。こういう作業は1日3、4時間はかかる。それらをやった上で、本を読み、情報収集し、イベントに行き、企画を立てる。

これは連日、高負荷で筋トレしている状態ではないか。あるいは高地で走り込んでいる状態。重力の大きい星から来た状態。この星では無双かもしれん。
呼ばれればケニアの留学生ぐらい活躍しますので今年もよろしくお願いします。

しかし寒い。初詣に行かないと神に見放されるだろうか。でも行かない。

思い立ってスペイン語で年賀状を書いたら綴りを間違えて「オケツましておめれと」みたいになっていた。

まちがえる朝まちがえる始まりに皿の脂が光を溜める

1月2日

テリブレのインタビューを翻訳して過ごす。非常に幸せ。テリブレというのはメキシコの悪役レスラー(185cm/105kg)です。

2020年末のインタビューで、2021年を生き抜くパワーをくれる。「情熱的に打ち込めば何でも完璧にうまくいく」「自分を捧げることだ。でなきゃ平凡な誰かさんのままで終わっちまう」など、自己啓発本の目次も真っ青なパワーワードが連発される。noteに翻訳したので気合いを入れたいヤツは読むがいいぞヌハハー!

中でも「人生ってのは全部を持ち続けることはできねえからな」が特に響いた。過去の成功をも手放すことで、今現在を生きられるのだ。そうしよう。

でもこれは、テリブレが所属団体のほぼ全てのベルトを獲得し、手放した実績があるから言えること。私は過去に何か獲得したことがあっただろうか。と、記憶を探ったところ、大学一年生の時に「ミスコン」で優勝したことがあった。しかし翌年そのタイトルは「名物女コンテスト」になっていた。レギュレーションの見直しを強いてしまい申し訳ありません。

おれは悪、暴漢、輝くクズ野郎そのために寿命を手放した

1月3日

朝からジェフ・コブ祭り。ジェフ・コブというのはハワイ出身のプロレスラー(178cm/119kg)で、彼の出た試合を配信サイトで見まくるのがジェフ・コブ祭り。8時間ほど開催。

ヘビー級のプロレスにはあまり興味をそそられないが、ジェフ・コブだけは不可解なほど気になる。たぶん前世で兄弟だった。

雲を引くスープレックス煉瓦色のからだ地平線にまたたいて

1月4日

引き続きジェフ・コブ祭り。空気イスで観る。

寝る前読書はアーシュラ・K・ル=グウィンの『暇なんかないわ 大切なことを考えるのに忙しくて』。ル=グウィンは『ゲド戦記』の作者で、この本は晩年のブログをまとめた本。

ネビュラ賞を辞退するくだりで興奮する。それを次点で受賞したのがアイザック・アシモフなのにも興奮する。文学賞システムの商業的側面への批判に興奮する。

どれぐらい興奮するかというと、コーナーに押し込まれたミルコ・クロコップがロッキー・マルティネスに繰り出した逆転の左肘ぐらい。

表紙の生気に溢れたきれいなおばあさんであるル=グウィンは、静かで力強い言葉で怒りを表明する。冷たい光を放つハイキックのような言葉で、男性優位構造を鮮やかに批判するさまは爽快だ。ル=グウィンぱいせん頼もしい。

そして自分の至らなさもザックリと斬られる。「無知は知恵ではない」(P170)で5分ぐらい笑った。血まみれで。

免罪符は二秒で燃える ひとびとの照らされた顔すこしみにくい

1月5日

今日の弁当はミートボール。でも主役は梅干し。友だちの自家製だ。この梅干しが魔法のようなおいしさで、味もそうだけど食べている間に彼女のことを考えるのがいい。その友だちは、寛容さ、芯の強さ、優しさ、思いやり、愛情、反骨心など幾重にもなったレイヤーが複雑に輝くような女性。大事な友だちのことを考えながら食べる弁当はおいしい。彼女にはすばらしくかわいい猫がいるんだぜ。

早弁を終え、東京都現代美術館で開催中の石岡瑛子展に行く。すばらしー。素晴らしすぎて仲良しの編集者の家に押しかける。彼女は美しい人であるだけでなく、外見の美しさを凌駕する勢いで渦巻く得体のしれなさを持つ。とはいえやはり美しいので、ほとんど知らない男性に急にバラの花束をもらったりする。彼女の家にも特別な猫がいる。

私の友人の多くは猫か犬か子供がいる。意に沿わない生き物に慣れている友人たちは人間ができていて、壁紙を引っ掻いたり、花瓶を倒したり、皿を割ったりするやつらに寛容だ。もちろん私にも寛容だ。

気まぐれで傍若無人で愛らしい猫と私にあの子やさしい



1月6日

仕事初め。まずはプロフィールを作る。

今回のプロフ作りでは、ささやかな野望があった。それは、子供がいると明記すること。隠してはいないがプロフで書いたことはない。

ずっと昔、子供の体調不良で仕事を休み「前科一犯」と称されたことがあった。男性社会では子供の体調不良は前科となるのだ。それ以来、「子供の」ではなく「私の」体調不良で休むようにした。

まあ明らかに仮病だとバレていただろうが、それでも、子供の発熱より大人のサボりの方が、ハンドリングしやすい印象を与えるだろう。それがうちのCEOすなわち私の経営判断だった。

のだが。

そもそも、子供がいてもフツーに働けるのが当たり前じゃない?

それに私がやってきた働き方はいわゆる「名誉男性」を目指すモデルで、時代遅れなだけでなく、むしろ女性の新しい働き方を妨げる危険がある。当時は必死だったとはいえ若い女のみんな、すまなんだ。

ここは罪滅ぼしも兼ねて、子供いてもフツーに働いてきましたよ、的に、シレっとなんかしてみたいのだ。あれだよ、草の根活動だよ、と意気込んでいるのである。

そんなわけで、「TV番組・CM制作に携わったのち、出産を機に出版業界に」やってきた明知です夜露死苦!

ブレーキの壊れた軽で仕事行く英国のパンク歌手の顔して

1月7日

プロフの件をフェイスブックで相談したところ、固有名詞をちゃんと出したほうがいいよ、と言ってくれた人がいた。確かに、私に仕事を教えてくれた人のことや、どこでお世話になってきたかは書いておかなきゃ、だね。

TV局のAD時代、仕事が終わらなかった。テレビの下働きは作業量が多い。それに私はダメ寄りの新人だった。その時の自分を思い返すと、ハムスターがあの回るやつの中をずっと走っている状態。ハムスターなら楽しいだろうが人間のやることじゃない。しかも傍目には笑える。端的に申し上げて悲劇。

ある夜、半泣きで映像素材をチェックしているところに、別の部署の宮さんという先輩がやってきた。ハムスターを見かねたのだろう。ひとこと「見ながらナレ原考えとくんだよ」と言った。

な、なるほどー! 素材チェックと同時に番組構成を考え、ナレーション原稿を考えるのかー! 初めて水面に上がって空気を吸った心地がした。

書く仕事を教えてくれたのは増井さんという偉人で、学んだのは「愛ある貶(けな)し」、怒られたのは「対象と向き合え」。ほか多数。

私は仕事のできない新人だったが、偉人に育てられたおかげで仕事できる大人になった。不義理なのでお礼は言っていないが、今後、活躍することで恩返しとしたい。

さくさくと霜柱踏む雪原に黒光りするモノリスの建つ

1月8日

Twitterを少し見てすぐ逃げ出す。やはりここはもう人間の住める環境じゃない。獣たちの咆哮が至るところから聞こえる。政治や社会への信条を主張する戦場だ。そこに広告がぶっ込まれる。地獄だ。

どうせならもっとファンタスティックな戦いが見たいのよ。『GALACTICA/ギャラクティカ』みたいなさ。

ここで気づいたけど、自我が暴走したツイートは語尾を「中尉」にすればソフトに着地するね。いかがなものか、中尉。

ねえ中尉おはよう中尉もしきみが犯罪者でも好きだよ中尉

1月9日

1月に沖縄に行く予定だったがコロナで無期延期になった。

沖縄には中高の同級生がいる。二度目に行った時、彼女のお父さんに会った。背が高く冗談を言って豪快に笑う、輝けるダンディおじさんだった。でも昭和天皇の話をする時は違った。

広島生まれと沖縄生まれには共通項がある。戦争体験が近い。原爆と地上戦。それは近い先祖の、たとえばおじいちゃんの学生時代の集合写真に、虫食いのように多数の穴を作る(「これとこれは原爆で死んだ」と指差す顔の多いこと)。いつかきちんと書きたい。

そして、祖母が辛くも原爆から逃れたおかげでこの世に生を受けたわたくしといたしましては、この世のエンタメを楽しみ尽くしてから人生にオサラバしたい。

『指輪物語』のエオムンドの息子エオメル登場シーンを読み返す。指輪物語ではローハンの騎士たちが好き。とくにセオデン王。理由は死ぬ間際まで強そうだから。

ナイツのラジオを聴く。ナイツは言葉を駆使して笑わせてくるから好き。ミルクボーイも好き。なんぼ聴いてもええですからね。

1話ずつ大切に観てきた『ナイト・マネジャー』ついに最終回。素晴らしいラストに恍惚となり3時間ほど行き倒れる。『TENET』もそうだけど英国ドラマならではの美学ってあるよね。

この作品はゴア描写がないのがいい。ハンマーで足の指を1本ずつ潰したりしない。メル・ギブソンがいたらこうはいかないだろう。残虐なシーンは想像させるだけ。叫び声と銃声は聞こえるけれど、カメラが写すのは事態を察した美しきエリザベス・デビッキだけ。

男の嫉妬を誘うトム・ヒドルストンの奇跡のような立ち姿。

原作は『裏切りのサーカス』のジョン・ル・カレ。かっこいい名前。とくにル。
マリコ・ル・アケチ。かっこいいじゃん。

焼け野原に生まれたきみは立ち上がり空に決意の口笛を吹く

1月10日

ブログの名前を『毎週月曜新聞』から『アンダレー』に変える。

その昔のある週末、友だちがヤなことあって辛気くさい顔してたから「月曜からなんかやろ」って、3日後ぐらいにHPを作った。HTMLをパチパチと打ち込んで。

名前なんにしよ?
あれにしよー、あのさ、誰だっけ、有名なコピーライターの
ああ、なんだっけ、なんとか新聞
それそれ、月曜新聞にしよ

2008年のことであった。今はもうお互い忙しくなったねえ。でもいつかまたなんかやろ。

「アンダレー」がどういう意味かというと、よくわからない。
「ワーハハハハ! アンダレー」って感じ。よくわからない。

アンダレーってあのひとは言うアンダレーそれはそのまま行けという意味


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