2020.2.17

『東郷見聞録』の編集協力として知りたかったこと

ディック東郷の『東郷見聞録』が発売中です。 ぜひお手にとってみてください

さてさて私は一般誌でカルチャーなどを中心に書いているライターで、プロレス専門誌では書いたことがない。そんな私がなぜ、ディック東郷の『東郷見聞録』の編集協力をしたのか。それを書いておく必要があると思った。書きます。

きっかけは、約2年前に『週刊プレイボーイ』でやったインタビュー。(【前編】 【後編】。誤字などは心眼で補ってくれ)

それから1年ほど経ったある日、プロレス会場でディック東郷の売店に行きTシャツなどを買い求め、著書の進捗を尋ねると、なかなか進まなくて、ということだった。それでお手伝いできればと思った。

この時点では、書籍としての企画はどこの出版社にも通っていない。企画って通っても本にならないことは多い。本になるというのはすごいことなのだ。そしてライターは自分の時間を切り売りする仕事だ。私の最低時給は3000円ぐらい。取材・執筆だと1本2万円強から請けている。そういう状況で、出るか出ないか分からない本の、どれほどの作業量になるか分からない手伝いをするなんて、同業者には狂気の沙汰だと言われても仕方ない。

でもやりたかった。

ディック東郷はすごいレスラーだから、というのに加え、一度引退してプロとして復帰している、という点にも惹かれた。

ここでちょっと私の話です。

私は30代の少しの間、プロの格闘家だった。6歳からやりたかったが、まあ女だからできなかった。家族や恋人や元夫など周囲は全員反対したし、私自身も女だからやってはダメだという思い込みもあった。でもある日、このまま死んだら後悔すると気づき、まだ間に合うはずだと始めた。

そしてプロになったものの、結果としては続けられなかった。一番の理由は減量ができなかったから。逃げずに減量成功したところだけはえらかったけど、私は根性なしだった。

辞めたあとはロスになった。ふと「どうして続けられなかったのか」「続けられる人と私の差は何か」「なぜここにいるのか」的に人生を考え込んでしまい、カフェの窓ガラスに写った自分の顔の薄暗さに愕然とすることもあった。ロスっていうのはそういう風に人を蝕むのだろう。

幸か不幸かシングルマザーのため、とにかく働くという選択肢しかなかったので生きていますが。

そこで、一度は引退してもプロとして復帰できるディック東郷という人は、私とどこが違うのか、すごく知りたかった。記者としての興味に加え、個人的にもその話を聞くことで救われたいとか納得したいとかそういう思いもあった。

結果として、「プロレスラー」として生きるべき人だと知った。少なくとも私とは格が違うことは確かだが、単に格が違うというのではない。たとえば、プロとして続ける条件を揃えられる人。

プロレスラーは、本人の資質と努力だけでなく、他者の協力を得られないとプロレスラーにはなれない。試合のオファーが来る、ファンから支持される、などです。ですよね。なるほどね、納得。

さらに東郷さんは「180cm/100kg」ではないのに、プロのレスラーとしてリスペクトされている。それを覆す鍛錬など何かが過去にあったのだ。すごい。全然違う。私なんか160cmで女子格闘家としては恵まれている方だけど減量ができなかったんだよ。プロっていうのは本当にすごいよ。なるべくしてなる人がいる世界なのだ。

まあ大げさに言えば「人生を捧げている」かどうか。ディック東郷がプロレスに人生を捧げているかというと、私には分からない。きっとそんなこと考えもせず、単にプロレスをされているだけだと思う。ただ、私のような者が格闘技をやるなら人生を捧げる必要があったが、私は捧げていなかった。

編集作業を通してそういったことが明確に分かったことは私にとって救いです。

そして編集協力として何をしたかというと、主には「締切係」。まあTwitterとか見たらわかるように、書ける人なんです。必要なのは締め切りだったんですね。だから私は基本、待つ人としてお手伝いしたわけです。しかも面白い。1人目の読者ですよ、うらやましいでしょ。過去にブログも書かれてますし、そこから編集し直した章もあります。

そうやってできた『東郷見聞録』はすごいよ。

ディック東郷を世界に向かって突き動かした衝動は、完全にオリジナル。過去の多くの要素が絡み合って「ディック東郷」というレスラーが作り上げられていて、そのディック東郷にしかできない発想だし、行動です。一般人が旅に出たってこんなに事件は起こらない。ディック東郷が旅に出たからこそ、そしてスペイン語や英語を駆使して会話する知性を備えていたからこそ、世界中でこんなに化学反応が起こるんです。

加えて私は一般誌で書いていますので、プロレスファン以外には伝わらない部分が分かります。そこは質問して加筆していただいたので、プロレスファンでなくても楽しめる旅の日記になっています。ファンの方は自信を持って「一般の方」にもオススメしてください。そしてディック東郷のファンを増やしましょう。

あとこれ書かなくてもいいと思うけど、出版社からいただく印税とは別に、東郷さんは「ボーナス」を振り込んでくださった。すごい。何もかも別格だ。ありがたく頂戴した。人生を捧げる勢いで取り組んだ自信はあったし。
人生で一度だけもらったファイトマネーは今も冷蔵庫に貼ってあるけど、その横に、東郷さんからいただいた一部を貼っておこうと思う。

そういうわけで私はまたふつうに編集者&ライターやってて、大げさに言えば人生を捧げている。ライターは人の気持ちを多くの人に伝える仕事なので、とてもやりがいがあり、楽しい。

社会に合わせて「女性の身だしなみ」であるところの化粧もするが、こちらはどうにもスキル不足でエロめの熟女に見える。困った。行く先々で誰かの愛人と思われているけど多くの場合、誤解です。男ならこんな悩みはなかっただろうが仕方がない。自然体の時の中身は小学6年生だと少しずつ伝えていこう。

小6らしく、好きなことには全力で熱中し、人目があると調子に乗ります。

こんな感じです。


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