2019.10.22

女子プロレスの面白さは、強さが打撃力だけじゃないところ

 取材を続けてきて、女子プロレスの面白さは「強さ」の多様さにあるとの思いがあり、それをメモっておきたい。

 女子プロレスの強さについては、4つの指標を設けています。以前は@打撃力 A巧さ の2つでした。

 これは仙女(センダイガールズプロレスリング)の選手がダントツで持っている能力。スターダムの一部の選手も持っています。この2つが揃うことで、人間としての、そして女子プロレスラーとしての美しさを形成すると思っておりました。

 しかし我闘雲舞(ガトームーブ)という女子プロレス団体の里歩という選手と出会い、考えを改めました。

 里歩さんはこんな女性です。

 小学3年でデビューし、里歩さんはA巧さ があるのは間違いないが、華奢な体つきに@打撃力 があるとは思えない。それでB美しさ も強さに結びつくと気づく。

 このB美しさ は、見た目の美しさもあるけど、所作も大きい。多くの選手は「ぐわあー!」とやられるけれど、里歩さんのやられ方には独特の品がある。「よよよ」というような。

 キャリアのある里歩さんはやられっぷりがよく、長い髪をバッと振り乱して倒れる。その倒れ方は、育ちが良く運動神経も良い女子高生が何らかの打撃を受けたらこう倒れるだろう、というリアルさがある。倒れるにしてもパンツが見えないように気をつける女の子という感じ。そしてキャリア13年でもまだ22歳、倒れても立ち上がるスタミナに説得力を加える若さ。悲壮さがない。(ちょっとうまくいえてないまた考える・笑)


我闘雲舞の里歩ラスト興行、観客も温かく送り出す雰囲気があって最高だったよ

 里歩さんをこんな素晴らしい選手に育て、そして快く(もしかしたら奥歯を噛み締めて)送り出した我闘雲舞のさくらえみさん、育成手腕も人間力もすごい。

 そんなわけで、@打撃力 A巧さ B美しさ で強さを理解するようになったところで、東京女子プロレスとの出会いでさらに幅を広げられる。

 東京女子プロレスは、仙女などを見る者にとっては@打撃力 があまりにも足りなく見えるのでは?
 しかし、東京女子プロレスの女子レスラーは、戦いで観客の心を掴む。プロレスに必要だと言われる「プレイ・バイ・イヤー」の権化です(さすがDDT系列)。これはもう魔法。東京女子プロレスは魔法少女だらけです。

 そんなわけで、女子プロレスの強さの指標には@打撃力 A巧さ B美しさ に加え、Cまほう もあるなと思うに至った。

 そんな女子プロレスの「強さの多様さ」って、RPGとかゲームに当てはめると分かりやすいかも。

勇者(主役。オールマイティな能力) 戦士(とにかく打撃力。190cm120kgあるいは戦闘民族出身) 賢者(知力。ベテラン。西村修タイプ) 魔法使い(打撃の弱さを補って余りある火の魔法、など)

 勇者感アリアリな方々といえば

 仙女の橋本千紘は限りなく戦士に近い勇者。ときめく強さ。ぎゅん。
 東京女子の山本美優も間違いなく勇者。しかもどこか抜けているという、愛されるヒーローにマストの資質をお持ちです。
 アクトレスの関口翔も勇者タイプだけどなかなか大きい舞台がないですね…どうにか応援したい…。
 世羅りさも勇者タイプでは? このところのTwitterでの発言では人間的な格をお見せになったと尊敬。女剣士です。
 ”リングの妖精”と言われる万喜なつみは、まさにオールマイティ。まほうも使える。ゆっくり静養してね復帰待ってます。

 戦士といえば岩田美香なんですけど…勇者ではなく戦士だと思うんですけど…(けがにまけるなー!)

 花月は戦闘力の高い賢者(みんなはどう思う?)。私はこういうタイプの選手が大好きです。水波のアニキも同じく好きなタイプです。

 魔法使いといえば、東京女子の伊藤麻希をおいて他におりますまい。『指輪物語』のガンダルフ、『ゲド戦記』のゲド、ファンタスティック・ビースト。そして実は美しさがある点、『エアマスター』のザキヤマを思わせ、胸が高鳴ります。

 そして木村花は未知。新たな強さを教えてくれそう。若く懸命な選手の代表格と捉えていて、期待しかない。こういう若い選手が我流を通したとき、女子プロレス界の未来が開けていくのじゃー! 邪魔するオッサンは許さんぞー(ピコピコハンマーを握りしめて)! という謎の親目線の中年女性ファンは意外に多い気がしますよ。

 そうやって考える中でも、里村明衣子と紫雷イオはカテゴライズできない。やっぱり別格なんです、私にとって。
 そういう選手を自分の中に持っていると、女子プロレスを観るのがすごく面白くなるし、私の記者としての指針になっている選手です。


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