2019.5.27

「いいバイクだねえ〜!!」と言われることもある

止まるまで絶好調の我が家のエンフィールドがめずらしく「ぼくちょっとぐあいわるいの」と言うのでバイク屋さんに連れて行ったら、バッテリーが死んでいた。


「ぼくおなかのあたりがへんなの」

偶然来ていたお客さんが、なぜバッテリーが死んでいるのに自走できるのか不思議がっていた。

それはね、私のバイクは魔法で走るからなんですよ。ふふふ。

そんな話を恋人にしたらやさしくスルーであった。うん、仕事で忙しいところ魔法の話してごめんな。でもさ、最近のバイクはキャブレターがないらしいけど、本当に魔法で走ってんじゃないの? ねえ、どうなの?

「意外と新しいんですね」

と、面識のない人に言われることがある。ここだけ切り取ると異様な状況だけど、女性のバイカーは信号待ちなどでよく知らない人に話しかけられるもの。そのうちのひとつがこのパターンで、「何年式ですか?」と突然、何の前置きもなく聞かれる。

というのも、私のバイクはクラシックなデザインのため、96年式の割に古く見える。まめに磨きもしないし、20年乗ればそれなりにヤレるし。そして、メタル界には速ければ速いほど偉い流派がいるように、バイク界にも古いほど偉い流派がある。

要するに、勝手に期待されて勝手にがっかりされているってこと。

知らない人なのに失礼だな。でもダイバーシティ推進派の私は「そうなんですよー、うふふ」と言う。その人が自分の尺度で考えたり言ったりすること、あんまし否定したくないし、むしろ嬉しいときもあるから。

「いいバイクだねえ〜!!!」と言ってくれた、自分の子と近所の子をワンボックスに満載したお父さん。「…かっこいいですな」と言った、古いクラブマンに乗ったおじさん。みんなありがとう、私のバイクただのオンボロなのにやさしいな。

喫茶店で「あなたの髪型、とってもすてき。急にごめんなさいね」と言ってくれた白髪の小さなご婦人も忘れられないな。「明知さんってマリリン・マンソンに似てますね」と褒められたことも忘れられないけど。

人は結局、自分の尺度でしか考えられないし、それが人を否定しなければ押し付けても悪いことは起こらないんじゃないか。人を否定したくなったときだけ、その人の置かれた状況を考えてみるようにしたい。

痴漢に遭わなければ安全ピンでは刺さないし、子育て時期に仕事を続けられる仕組みがあれば女性管理職も増える。女性のバイクが汚れている場合は、仕事と家事の両立で自由時間がごくわずかしかないせいだ。

もし「磨きなよ」と言われたら「お前は帰ってトイレを磨けー!」と言う準備はできてるんだけど、いっこうに言われない。覇気かな。

そんなことを考えながら、バッテリーを交換して絶好調になったバイクに乗った。


トランプ大統領来日による渋滞は、盗賊風にすり抜けしたので大丈夫です。#TENDIDOCOMOBANDIDO


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