毎週月曜新聞 悪のロゴ
2016.7.18


アクマおばさん

この体験、まじでオカルトだから、稲川淳二さんの声で脳内再生してね!

数日前、取材の帰りに電車に乗った。吊革にぶら下がりながら、いつも通り帰宅してからの仕事の算段を考えようとするのだが、なんだか頭がザワザワして集中できない。なんだろう、左前方に違和感。そっちを見ると、20cm先に、真顔のおばさんの顔があった。ぞわわ。

すぐ目をそらしてうつむく。
いや、もちろん顔が浮かんでたんじゃなくて、ちゃんと体の上に乗ってるよ。でもそれほど込んでいない電車で、20cmの距離は近すぎないか? しかも真顔。
その人、人間の形はしてるけど、どうも得体の知れない…人間じゃないみたいな感じがするんだよ!

まあ、気のせいかなともう一度見てみる。げげ、まだ見てる。やだな〜、こわいな〜。

しかもこの顔、見覚えがある。10年以上前に一度会ったおばさんと同じ顔だ。


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ずいぶん前、仕事帰りに六本木から日比谷線に乗った。確か夜の11時頃。疲れて座り、帰ったら何か楽しいことしよ…と考えていたのだが、左側に違和感。なんだろうと見ると、左隣に座っている背筋の伸びたおばさんが、顔だけを90度曲げてこちらを見ていた。真顔で。

すぐに目をそらしてうつむく。うわ〜なんだこの人。何かの病気だろうか。しかし服装が都会の人っぽく小綺麗だ。もう左は見ないでおこう。

10分後、魔が差した。もう大丈夫だと思ってチラッとそちらを見ると…わーまだ見てる! 同じ姿勢のまま真顔で! しかもこの顔、見たことある。

『悪魔を憐れむ歌』という映画を見たことがあるなら分かるかも。そのおばさんの顔、あの映画に出てくる、悪魔が乗り移った人と同じ顔なんだ。

そして目が離せなくなった。怖くて動けない。もうだめだ感。非常にもうだめだ感!

すると、突如として体の右側が温かくなってきた。どんどん温かくなって、ふと体が緩む感覚が生まれ、ようやく前を向くことができた。

右隣には、ぽっちゃりして背が高く色白で、眼鏡をかけた男性がウトウトしていた。さっきからいたはず? なぜ急に温かく? もしや…天使とかそういう方ですか?

そして左側には相変わらず違和感(もうぜったいそっちは見ない!)、右半身はポカポカという、まさに地上での天使と悪魔の権力争いの境界線に座っている状態。

その後のことは実はよく覚えてないんだけど、いま生きてるからちゃんと電車降りて帰宅したはず。

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この時のおばさんと同じ顔をしていたのだ。もちろん年齢や服装の雰囲気を考えても別人。しかし表情が同じなのだ。これはまずい。しかも直感で分かる。後ずさりしたら…やられる(何を)!?

いや待てよ。このアクマおばさんが再び現れたということは、以前の”天使の”お兄さんも近くにいるんじゃないか。気配を感じろ、気配を。

…いないようだ。これはひっっじょーーーーにまずい。悪魔に乗り移られるのも時間の問題だ。さよならみなさん。みんなのこと、大好きだったよ。

いやいや待てよ。なぜ天使のお兄さんがいないか考えるんだ。以前の私は肉体的にも精神的にも弱かった。しかし今は、数々の問題と対峙し乗り越え、強くなっているではないか。そんな私なら1人でも立ち向かえるから、天使のお兄さんは別の弱き者のところに居るのでは?

そう考えるとみるみる自分の中に力が湧いてきた(気がした)。大丈夫だ(たぶん)。1人でも追い払えるぞ(きっと)。

そして私は顎を引き、背筋を伸ばした。そしてゆっくりとそのおばさんの目を見て、ココロの中で「おとといおいでくださいませ」と強く念じた。「おとといきやがれ」では怒るかもしれないからな。

するとアクマおばさんはすっと目をそらし、ドア際まで移動し窓の外に目をやり、こちらはもう見なかった。

悪魔撃退成功。

たった数分の出来事ながら勝利の感覚に包まれ、己にみなぎる聖なるチカラを感じながらウキウキ帰宅。そして仕事などしながら数日たった今、もしかしたらあの瞬間はまぢで危ないところだったんじゃないかと恐怖が蘇り、部屋をうろうろしているところです。

オバケはいないと思うけど、アクマはたぶんいるね。ということを言うと、社会的信用を失うだろうか。いや、大丈夫だ。もともと、ない。


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