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2016.5.23


本の虫化した春

忙しかった3月、4月から一転して5月は暇になった。忍び寄る金欠の影は無視して観たかった映画とDVDを観まくり、本を読みまくった。み、みんな、お、おもしろいんだな。

『恋の相手は女の子』
室井舞花 著/岩波ジュニア新書

巷で話題のLGBTが1冊でほぼ分かる本。
”セクシャルマイノリティ”である著者の生い立ち、都庁展望室のカフェで挙げた結婚パーティーのことに加え、知っているようで知らないLGBT関連用語の説明や同性婚を認めている国の一覧なども掲載され、資料としても便利。

室井さんの経験談から、私が気にしていなかったひとことに傷つ人もいることに気付かされ反省しきり。でも、この本に感動したポイントは、セクシャルマイノリティでなくても人間は「人それぞれ」だって言っているところ。

大多数と違う感性を持つ人は意外と多い。というか、どんな人でも「社会とズレてる」と感じることはあるし、何気ないひとことで傷ついたりする。誰が悪いということでなく、これは「社会の固定観念」から起こる。文中でも「人は生活するうちに知らず知らず社会の固定観念に染まってしまう」とある通り、確かに「男は男らしく」とか「良い母親は家事も完璧」とか、自分でも追いつめられてしまう固定観念ってある。

そこからちょっと発想を自由にして、コミュニケーションに臆病にならず「個人」として付き合う、付き合ってもらう社会になればいいんだよね。私も「女だから」やなこともあるけど「私だから」面白いお仕事の依頼をいただいたりするわけだし。

すっごく基本的なことだけど、他者と「個人」として付き合うこと、これからも心がけよう。

室井さんはお仕事の傍ら執筆するのはたいへんだったと思うけど、この本を読んで気が楽になる人はすごく多いと思う。偉業です。あと、学校の先生など教育に携わる人は必読です。

先週、金原瑞人、三辺律子、酒寄進一ら人気翻訳者が登壇したトークイベント『翻訳百景』が1000円とは思えない濃密イベント脳が沸騰した。楽しむためにいろいろ読んでいったので↓→

『白雪姫には死んでもらう』
ネレ・ノイハウス 著/酒寄進一 訳/創元推理文庫

おもしろーいイッキ読み!最後のハッピーな感じもいい。
”人間のおぞましさと魅力を描き切った衝撃の警察小説”とあるがまさにソレ。まさかアイツが…と気づいた時の戦慄!
ドイツのファンタジーやミステリを精力的に翻訳されている酒寄進一さんは、ミステリーを訳す時は地図や建物の図面まで駆使して裏を取るのだとか。なるほど、本の中の世界が想像しやすいわけだと納得。

『犯罪』
フェルディナンド・フォン・シーラッハ 著/酒寄進一 訳/創元推理文庫

さすが弁護士が書いただけあって臨場感有り。犯罪は日常のほんの目と鼻の先にあるんだな。くせになる面白さ。続編?もあるようです。

『砂漠の宝』
ジクリト・ホイク 著/酒寄進一 訳/福武書店

まさかこのオチとは!という見事な構成のファンタジー。砂漠をラクダで進みながら語り部の話が織り込まれ、だんだん2つの物語が混ざってきてしまう不思議な世界。砂漠の民好きは必読。

『さよならを待つふたりのために』
ジョン・グリーン 著/金原瑞人・竹内茜 訳/岩波書店

若い末期がん患者の恋を描いたこの作品は『きっと星のせいじゃない』という題で映画化もされている。泣くほかない。”童貞”のユーモアなど明るさを失わないオーガスタの存在に、これがノンフィクションならと思うけど、同時にフィクションのチカラを知る。

『ジェンナ 奇跡を生きる少女』
メアリ・E・ピアソン 著/三辺律子 訳/小学館

暗闇を手探りで歩くように主人公と共に苦しみながら読み進めていたら、途中からニトロを投入したように物語は加速、そしてまさかこんな結末とは! ページをどんどんめくりたくなる幸せな読書体験。

ほかにもいろいろ読んだ。そろそろ仕事します。




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