劇団東京フェスティバル『無心』

2015.10.27

劇団東京フェスティバル『無心』で
笑いながら沖縄基地問題を考えた

 10年ぶり…いや、それ以上ぶりに舞台というものを観てきた。劇団東京フェスティバルの『無心』。脚本・演出はきたむらけんじさん。

 沖縄の基地問題を題材に、米軍キャンプ前の「テント村」で活動する人々とその家族それぞれの”事情”を描く。

母親が入院してお金が必要なところに軍用地の買収話が…
リーダーの娘に彼氏ができたが米兵らしい(それがまたイイ奴っぽい)…

 活動と日常の事情のジレンマ…うわー悩む!

 物語には、国内の米軍基地の7割以上が沖縄に集中していること、米兵の犯罪は日本では裁けない地位協定のことなども自然に折り込み、笑いながら沖縄の基地問題についてのキモが分かってくる。

 メンバー内でも基地ゼロ派、ある程度容認派がいたり、活動に対する姿勢もさまざま。個性と同時にメンバーの温度差も描く。

 難しい問題を笑いに包んでいて、さすがいつも明るくて面白いきたむらさんだ。物語のいいところは、報道で伝えられない「人の気持ち」を伝えられるところだなあと改めて思った。

 そして、単に面白いだけでなく夢がある。この筋書きどおりなら、なんだかうまく行きそうな希望が見える。その夢や希望って、現実が厳しいからこそ浮き上がってくるのだけれど。

 沖縄には私の大切な友達がいて、住んでいるところでは遠くから銃声が聞こえるそうだ(米軍の演習)。子供の頃からそうなんだという話を聞くとちょっと己の無力さに震えるけど、心にとどめておくことぐらいしか行動できない。

 でも関心を持つことだけはできるし、それが活動する方の後押しになればいいな。そして希望と現実の距離がどんどん縮まって、物語にするまでもないぐらいに狭まればいいなと思う。

 世の中の人はみんな何かしら社会問題の当事者で、私も同様に「薄れゆく原爆の記憶」に広島っ子らしく危機感を覚えたり、果たして娘を無事に進学させられるかしらと「シングルマザーの貧困」と直面しちゃったりしてますが、この『無心』にならい、せめて面白がりながら直面したいよね。


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