毎週月曜新聞 悪のロゴ
2015.5.15


夢だったのだ

 おかげさまで忙しい。12時間以内、24時間以内、36時間以内の締め切りがある。書きたいことの断片が頭の中でガサゴソと音を立て、集中できない。

 忙しくても朝食は毎日作っている。今朝はフレンチトースト。卵液に砂糖とシナモンとナツメグを少々、フライパンを熱してバターを入れ、浸したパンを並べる。フタをしてその間に紅茶の準備。しかしふと気づくと何もできていなくて、子供はおいしそうにコーンフレークを食べている。
 夢だったのだ。

 「最終的に全員泣きながら頑張ろうってなった」と話す若者らとすれ違う。それがブラック企業だとしてもうらやましい。私はいつも一人で泣いている。

 仔牛ほどの犬を連れた人を見かける。中腰で見送る。

 祖父の家の敷地には木小屋と呼ばれる農機具を収める小屋がある。外には風呂焚き用の薪が積んであり、使う分を運んできてくべる。私はそこから良さそうなあんばいの薪を抜き取っては積む。黄金色に輝くそれを、崩れないようパズルのように積んでいくうちに手がべたべたしてくる。これは薪ではない。芋けんぴだ。
 夢だったのだ。

 プッシュロッドが何か。コンロッドが何か。バイクに乗って20年経つが分からない。

 アマゾン川に浮かぶ豪華クルーズ船で行われる首相のパーティ。そこに私は潜入し、スパイ活動を行っている。正体がバレそうになったので仲間と川に飛び込み、射られて気を失った同僚の襟に傘の柄を引っ掛けて、泳ぎながら岸をめざす。
 流れはそれほど強くないが、ワニがこわい。こわくて漏らしそうだ。どうせ水の中だから漏らしたって分からないだろう。それに早く岸に引き上げないと同僚の命があぶない。
 決断の時が迫っている。


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