毎週月曜新聞 悪のロゴ
2015.2.23


赤穂浪士だったのに

 事務所や会社に勤めると、いろいろと腹の立つことも多いのではないだろうか。八つ当たり、なすりつけ、押し付け合いなどさまざまなケースがあるが、できれば怒りの連鎖はとどめて心静かに暮らしたいもの。そこでオススメなのが「赤穂浪士方式」だ。

 腹の立つ相手の前世が赤穂浪士だったと想定してみるのだ。するとあら不思議。

 前世で赤穂浪士として非業の死を遂げたのに、生まれ変わったら変わったで社会的評価が低くなりがちな女性として働くことを強いられ、うつ病の恋人と分かれることもできず、毎日残業で経費の精算をする時間もなければそりゃ八つ当たりもしますよね、どうぞご自愛ください。

 となる。ほかにも、前世が赤穂浪士なのに営業成績が振るわない、前世が赤穂浪士なのに妻(夫)が浮気、前世が赤穂浪士なのに水虫(または痔)など、ほぼすべてのケースをカバーできる。赤穂浪士のほか、「犬養毅方式」「ジャン・バルジャン方式」「あしたのジョー方式」など、お好みで活用していただきたい。

 これさえ身に付ければもう安泰だ。人類は平和な世界を勝ち取ったのだ!

 と思うのは認識が甘かった。ある日、赤穂浪士方式を使ったところ…

 前世が赤穂浪士だったにもかかわらず、毎日夫のカネで遊びTVを見て寝転がってせんべいをかじり自堕落な生活を送った挙句、他人に用事を押し付けるとは何たるろうぜきもの(しかも国民年金も払っていない)!

 逆効果になってしまった。
 こいつは困った一触即発だ。平和な世界に突如として暗雲がたちこめ、鳥たちは歌うのをやめ、野うさぎは逃げ惑い、花は枯れ木々は葉を落とし、太古の山に住む賢者は息を呑んだ。

 しかしここで人類に新たな智慧がもたらされた。ヴァレンティーノ・ロッシ方式だ。

ヴァレンティーノ・ロッシとは、イタリア人オートバイレーサー。これまで9回世界チャンピオンになり、年収は20億円超、雑誌の表紙にもなるほどルックスも良いイタリアの至宝だ。

 もし私がヴァレンティーノ・ロッシだったら…

 地位も美貌も生きる目的もない社会的弱者から何らかのバッシングを受けたところで、グラーーッツェとにっこりサインをするだけだろう。そして不自由な英語でアイムベリベリハッピィといった短いスピーチを行い、グッドなリザルトを叩き出すのみだろう。日々の瑣末な出来事に心をとらわれぬ者がレースで勝つのだ。

 おお、神よ、感謝します。サインをあげよう。取材はマネージャーをとおしてね、アディオス。

 この2大方式を体得したことにより、人類の平和は強固さを増し、もう安泰。

 だと思われたがまだ大物がいた。自堕落による自己嫌悪だ。夜中にまたカップ麺を食べてしまった。

 前世が赤穂浪士にもかかわらずなんたる狼藉だ打ち首獄門。ヴァレンティーノ・ロッシだったら夜中に恋人とワインは飲んでもラーメンは食べない。

 人類は、己への諦めにも似た怒りとどう戦えばいいのか。

 答えはひとつだ。人類はジムに行くしかない。スネークピットジャパン、本日月曜のクラスは20時から立ち技ブロンズ(初級)クラスです。体験希望者はご紹介しますよ(めぐちゃん、リンク参照)。じゃあいってきまーす!


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