当然の ルチャ部推奨作品 『ナチョ・リブレ』
主人公の修道僧イグナシオ(リングネーム:ナチョ)は、ファイトマネーで孤児たちを養っていた実在の神父兼ルチャドール「フライ・トルメンタ」がモデル。
メキシコ・オアハカ州の美しい風景の中で撮影された、試合シーンの充実ぶりを見てくれ。現地でエキストラを募集したところ、20人のルチャドールが集まったそうだ。全員本気だ。
大丈夫なのか。オペラのシーンに力を入れすぎて興行的にプロブレムが発生した『ゴッドファーザー3』の教訓が生きてないじゃないか。
主演のジャック・ブラックも、スタント監督ニック・パウエルと数週間前にオアハカ入り。ルチャ技を研究し、あげくオリジナル技を開発したという熱量。その名も「アナコンダ・スクイーズ」。相手のボディを大蛇のように締め付ける、その名の通りの技。しかし「Wind of A Lion」と名付けられたもうひとつの謎の技、相手の顔に座るムーヴらしいが、とてつもなくオソロシイ技ではなかろうか。顔面に何らかのカタチで風、だろ。おおこわ。
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さて、敵役のラムセスという最強レスラーを演じるのは、クレジットによるとセサール・ゴンサレス…つまりシルバーキング!言わずと知れた!…言わないと知らないか?言おうか?
ドクトル・ワグナーという伝説の覆面レスラーのご子息だ。新日本プロレスに参戦していた白ブリーフのカリスマ、ドクトル・ワグナー・ジュニアの弟でもある。
言うなればルチャ界のサラブレッド。つまり佐藤浩市だ。あるいはミキプルーン。とにかく、制作陣の本気度がビチィッと伝わるキャスティングに土下座しても構いませんか。
控え室で、ラムセスが試合前の「儀式」を行うシーンがある。
付き人たちにオイルを塗られ、丁寧に筋肉をマッサージをされる彼の目の前には、パイプ椅子に腰掛けたトレーナーらしきオヤジ。
どう考えても、丹下段平的なサムワンだ。
丹下段平はラムセスの目を覗きこみ、訛りのきつい英語で呪文のように繰り返す。
「ラムセス・イズ・ザ・ナンベルワン…
ラムセス・イズ・ザ・ナンベルワン…」
ラムセスだってはじめから「ナンベルワン」だったわけではない。紆余曲折があったことだろう。
1週間に10試合、など、辻褄の合わない試合スケジュールをこなし、過酷なトレーニングとヒジ・ヒザの故障を乗り越え、女にふられ、腹いせに壁を殴って拳を痛め、自転車で転び、ドブに落ち…たかどうかは分からないがとにかく、様々なものを乗り越えて掴んだ栄光であるはずだ。
栄光への執念は相当だ。ようやく手に入れたその地位…小太りのフザけた野郎に渡してなるものか!
などと思いつつラストの決勝戦を見ていると泣いてしまうんだが、みなさんはいかがでしょう。
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ところでジャック・ブラック関連映画は平均値が高い。この映画も、ルチャ部部長が観ると超面白いが、誰がみてもほどほどには面白いはずだ。
音楽担当のダニー・エルフマンは、ほとんどのティム・バートン作品を手がけており、「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」では音楽に加え、主人公ジャックの歌パートで出演を果たしている(日本語版は市村正親さんだよ濃いね)。
ほかにも有名作品をざっくざっくと手がける売れっ子である彼は、まさかの元OINGO BOINGO。歴史の波に押し流されたと思っていたが…OINGO BOINGOをカセットにダビングしてはクラスメイトに渡していた中学時代の私が狂喜した。
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作品の内容とはまったくの無関係だが、タッグを組むスティーブン(リングネーム:ヤセ)役のエクトル・ヒメネス(←右)の顔に、私の中のロバ顔ランキングが激動だ。
絶対王者はシャンソン歌手ジャック・ブレル(↓)。 『殺し屋とセールスマン』というフランス映画では、高名なシャンソン歌手とは思えないコミカルな演技(とロバ顔)が炸裂。忘れられない作品。
もちろんフー・ファイターズのデイヴもランクインしているから安心してくれ。
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