2011年12月5日号

 無職という立場を活かし、読書の秋を満喫した2012年。書を捨てよ町へ出ようと言ったカリスマなど黙殺する所存だ。まず読まないことには捨てる書もないわけでね。
 ところで件の映画でこの曲が流れるシーン、健さんへの恋ゴコロを合唱するオッサン方、せつなすぎて震えるね。

下世話な三賢者

 神話にもよく出てくる三姉妹。過去・現在・未来だったり、寿命・死・生命だったりする。恐ろしかったり、慈愛に満ちていたり、意地悪だったりする。
 オンナが3人揃うと、すべてを網羅する。それぞれがすべてを持っていて、その時々で見え方、姿形が入れ替わる。

   

 川上弘美『これでよろしくて?』よりナルホドな台詞を引用。

 「相手を好きだから、関心を持っているから、ささいなことが気になるし、それに嫉妬するし、それが自分を打ちのめす」

 なるほどな〜。そしてこの当たっていそうな指摘を正反対からなぞる台詞も。

 「相手が憎いからささいなことが気にさわるし腹が立つしそれが自分を打ちのめす」

 川上弘美の心のうちの描写は細やかで、まるでレースの刺繍。たまに近寄ってみるとそのモチーフの美しさと技術の高さ、芸の細かさに驚愕する。ふだん用はないんですがね、レースの刺繍。
 エッセイはどれを読んでも大爆笑。電車文庫にだけは選んではいけない。

 西加奈子は率直な豪速球。エロくて分かりやすい。

 金井美恵子の評論における辛辣さは憧れる。あんまり面白いので小説も読んでみようとしたけれど、1文が長すぎて主語を見失い続けたので、途中、非常口から脱出。頭脳の限界。

 それぞれ「いっかごん」あり、オンナの生き様のすべてをこの三賢者に見るようだ。セックスの描写もセキララで、下世話で、面白い。オンナって面白い生き物なんですよ。
 でもみんな、オトコとうまくいきそうにはない。もしもカレシが欲しいなら、一家言を持ってることだけはバラしちゃいけないな。

 下世話な話題は人選が難しい。たとえばセックスにおける演技の話を身近な人物にして、うっかりカレシにバレたら一大事だ。オトコのフーゾクが浮気じゃないならオンナもアリか試してみよう…も同様に、秘密裏に運ばれるべきプロジェクトだ。しかし一人でやっても面白くないうえ、指南してくれる先達が必要だ。

 そんな時は、三賢者を呼べ。必ずや答えが見つかるだろう。

『スプライト』 石川優吾



 時間を「波」というカタチに可視化し、それから逃げ惑う中で出会う人々の生き様を描くSF漫画『スプライト』。
 壮大なテーマで不穏な空気を重々しくにじませたかと思えば随所で笑わせ、マンガ初心者の私でも、苦労することなく楽しめる。

 「なぜ時間の波が何度も自分たちを襲うのか」という謎に対して、新たな説が提示された最新巻が発売だ。

 2060年の未来をさまよっていた御一行様は、今度は大きく過去へぶっ飛んだ。ビルごとだ。
 世は戦国、1575年の野原に突如現れたまるで要塞の如き高層ビルに対して、野望ある武将なら当然、乗っ取りの戦を仕掛けるぜ。大軍勢を前にして、どうするどうなる!?

 殺すか殺されるかという状況下で、殺せない現代人に「“平成の世の命の重さ”を教えるのかよっ!?」と毒づく巨漢にハッとする思い。
 「命の値段」というものは確かにあり、それはたとえば誘拐の身代金。黒澤明の『天国と地獄』では、誘拐の犯罪の重さに対して軽すぎる刑罰への問題提起がありましたねえ。または事故の慰謝料。アレは命の価値についての裁判なんだよねえ。
 日本人は命の値段が高い、つまり保障するには大金がかかるというので、海外からの飛行機の日本航路には腕利きを配置してあるという噂も聞いたことがある。
 命の重さか…人間て確実に死ぬ生き物なのに、重いよね、命。何が重いって、命の重量じゃなくて、その人との関係で生まれる感情が、重量を持つんだよね。
 みんな、いのちをたいせつに!…とか言ってスプラッタ映画は大好物だがね。ふふ。

 さて、最新の6、7巻の巻末には、2002年に発表された前身である同名作品が収録されている。しかもウレシイ4話完結だ。読んだことない方はこの2冊から読むのもオススメだ☆

『煩悩短編小説』
せきしろ/バッファロー吾郎A



 トークセッションとやらを初体験。『煩悩短編小説』の発売を記念した、著者のバッファロー吾郎A(木村)さんと、せきしろさんのトークショーだ。

 何を隠そうこのわたくしめ、せきしろさんの自宅に裸エプロンで押しかけ「弟子にしてくれるまで服を着ない」と雪の中、正座で宣言したほどのファンだ。優しいせきしろさんは着ていた革ジャンをそっと私の肩にかけ、こう言った。

「おとといおいでください」

 安心してくれ。妄想だ。

 ハデな黄緑色のボーダーのスニーカーに知的な眼鏡、そしてモヒカンで登場したせきしろ氏。登場と同時に「しゃべりたくてウズウズしてるよ」と言い放ったのち、トークショーなのに自著を黙読する寡黙さ。カリスマというほかない。

 この『煩悩短編小説』は、108文字の超短編が煩悩の数だけつまり108篇おさめられた短編集。
 短編は現実逃避に非常に便利なツールだが、コレはただの短編じゃない、笑える短編だ。夕暮れ時、寂しくてどうしようもない気持ちになった時に開くべき聖典だ。
 クロスロードで悪魔に魂を売りそうになったら、この本を開くがいい。必ずや天使が助けてくれるだろう(おそらくバカ殿の扮装で)。

 さて、実は人生初めてのトークセッション体験だったのだが、各短編の裏設定が聞けて大満足。毒蝮三太夫の意外な一面…! 「片想い」の相手があの大物女優だったとは…!

 まるでブラジリアンキックのように予測不能な角度から笑いのツボに入るトーク、尿意も吹き飛んだ。文筆家なのにLIVEもイケるとはさすが師匠。ついていきます。
 あと質問タイムで「おもしろいコト言うヒケツ」教えてもらったから、今後、私がおもろいコト言ったらバッファロー吾郎A先生とせきしろ先生のおかげだから。

他にもいろいろ面白かったのあるんだー。浅田次郎は宮戸さんのオススメで読んだ。

     

でもまた今度ね。ではまたらいシュー☆


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